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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「夢のある球界」

 

今や子どもたちの夢はサッカー選手


推定2億2000万円で契約を更改した山田。果たしてメジャーだったら、いくらになっていたか…[写真=川口洋邦]



 新春合併号にふさわしくプロ野球会の『夢』の話を、と編集部から依頼があった。

 しかし私には、今の野球界で夢が持てるとは到底思えない。1つは良い選手が皆、メジャー・リーグに行ってしまうこと。田澤純一(レッドソックス)のように、日本球界を飛び越えてメジャー行きを選択する選手まで続々生まれそうだ。

 努力をしないところに、良いものは生まれない。“子どもたちがなりたい職業”のランキングは、今やサッカー選手が1位。私はサッカーがプロ化したとき――すなわちJリーグが誕生したとき、「これは野球界にとって、大きな脅威になる」と感じていた。当時のJリーグチェアマン・川淵三郎さんは「まだまだ野球には勝てませんよ」と謙そんしていたが、あっという間に追いつかれた。川淵さんはJリーグのトップとして、サッカー界をここまで導いた。

 私など、サッカーの面白みがどこにあるのかさっぱり分からない。しかし現実を見ると、サッカーはボール1つあれば試合ができる、金のかからないスポーツだ。一方、野球はグラブだ、バットだとさんざん金がかかってしまう。そこへきて、グラウンドの問題がある。ちょっとしたスペースがあれば、道端でもボールを蹴って遊べるサッカー。他方、野球は今や公園でのキャッチボールすらできなくなってしまった。

 その一因は、野球のボールが「硬くて危ない」ことだ。サッカーボールなら、どこかから飛んできて当たったところで、びっくりして「痛〜い」という程度でおしまい。ところが野球は、軟球でも危ないじゃないかと言われ、グラウンドも次々町中から消えていってしまった。

 そんな環境面からして、すでに野球はサッカーに追い抜かれつつあるのではないか。日本代表の試合をはじめ、女子サッカーまでスタンドをファンが埋め尽くす。そこはテレビの影響も多分にあるのだろう。昔はテレビのスポーツ中継といえば、野球だけ。ところがJリーグができて以降、地上波では野球よりサッカーのほうが目立っている。子どもたちは毎日テレビを見ているのだから、影響を受けるのは当然だ。

 われわれの時代は、子どもがスポーツを始めるといったら、皆野球だった・・・

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野村克也の本格野球論

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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