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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「天才」

 

ヤクルトの指名候補になかった鈴木一朗の名


メジャー通算3000安打を達成したイチロー。天才が努力をした結果だ/写真=Getty Images


 イチロー(マーリンズ)がMLB史上30人目の通算3000安打を達成した。素晴らしい、のひと言だ。

 初めてイチローを見たのは、私のヤクルト監督時代。彼がオリックス在籍時の、オープン戦だった。ノックを見ているだけでも、足は速い、肩は強い。しかし何度思い出してみても、ヤクルトのドラフト指名候補リストに『鈴木一朗』という名前はなかった。帰京して、さっそくスカウト部長に文句を言った。

「ウチのリストに鈴木一朗のスの字もなかっただろう。なんでや?」

 彼らの弁解は、「“バッター・鈴木”として見ていなかった」だった。(愛工大名電)高校時代のポジションどおり、「ピッチャー・鈴木」で見ていたから、プロでは無理だろうと判断し、消したらしい。まあ、それ以上はこちらも追及しなかった。所詮、縁がなかったということだ。しかし、あれを見つけたオリックスのスカウトはボーナスものだったと思う。

 イチローは1973年生まれ。わが息子・克則と同い年だ。片や克則は引退してコーチ、イチローはいまだ現役。一塁まで走る姿を見ているぶんには、まったく衰えを感じさせない。イチローと同時期、オリックスの内野を守っていた馬場敏史がトレードでヤクルトに来たとき、こう話していた。雨天練習場へ行くと、オーバーに言えば24時間バッティングをしているのではないかと思うくらい、いつもイチローがいてコンコン打ち込んでいた、と。

 天才が努力をしたら、われわれが到底手の届かないところへ行ってしまう。巨人長嶋茂雄もそうだった・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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