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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「教え子の引退」

 

武田勝が私に教えてくれたこと


9月30日の引退セレモニーでファンに手を振る武田勝/写真=毛受亮介


 9月末から引退、戦力外通告選手名が次々発表されている。そんな中、かつて監督を務めた2チームの選手から、電話で引退の報告を受けた。社会人・シダックス監督時代の投手・武田勝(現日本ハム)と阪神福原忍(投手)。私に何かしら恩を感じてくれていたのだろう。「時の流れはどうしようもないからな。長いことご苦労さん」と労った。

 シダックスでは私の監督当時、野間口貴彦(=元巨人)、武田の2人が右と左のエース格だった。2人とも、プロ志望。野間口は、そこそこやれるだろうと評価していた。しかし、武田に対してはこう言った。

「お前はプロに行っても無理だ」

 彼は体が小さく、球のスピードも遅い。これではプロで通用するまい、と思った。ところが私の目もいい加減なものだ。実際プロで長く活躍したのは、私が「通用しない」と言った武田のほうだった。

 武田はシダックス時代、私から「野球の基本を学んだ」と感謝してくれているようだが、私のほうこそ彼から大切なことを学ばせてもらった。「固定観念にとらわれるな」。そして、「打者が嫌がる球種を一つ持っていれば、プロでも十分通用する」――。

 武田は右バッターに対するチェンジアップ、シュート、左バッターに対するシュートという武器を身につけた。そんな球が何か一つあるだけで、ストレート、スライダーといったほかの球が生きてくる。バッターは自分が嫌な球をよりマークするから、隙ができるというわけだ。

 ところが野間口の場合、全体的にまとまってはいるものの・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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