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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「選手指導法」

 

周囲を気にしての指導は選手やチームのためではない


苦手なカーブを克服し、一流打者へと上り詰めた筆者/写真=BBM


 メジャー・リーグには名言がある。

「教えないコーチが名コーチ」

 コーチがあれこれ口や手を出し過ぎるのは、選手にとって意味のないこと。アメリカのコーチは、選手自身の問題意識を高めさせるため、自分からは教えにいかない。選手自らが疑問を感じ、彼らのほうから「どうすればいいですか」とアドバイスを求めてきたとき、初めて指導を行う。時間をかけ、懇切丁寧に選手の疑問に答えてやるわけだ。

 一方、日本のコーチはといえば、常に選手をつかまえて指導していなければ、仕事をしていないように思われるのではないかと、周囲を気にしてばかりいるようだ。そんな指導は選手のため、チームのためではない。自分のための、“処世術”に過ぎないのである。

 私は若いころ、カーブ打ちが苦手だった。どれほど苦手かといったら、“カーブのお化け”が夢の中にまで出てくるほど。いわば完璧な“カーブ・ノイローゼ”である。新聞に散々書かれ、ファンも周知の事実。私がバッターボックスに立つたび、相手のファンに「カーブの打てないノ・ム・ラ♪」と大合唱された。あれには、頭に来た。

 しかし、誰もカーブの打ち方は教えてくれない。私が一軍に上がった1950年代後半は、専任のバッティングコーチなどいなかった。仕方がないのでオールスター戦のとき

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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