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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「ホームラン」

 

“4割打者”テッド・ウイリアムズの著書からヒントを得て“読みの打撃”を磨き、ホームランも量産していった/写真=Getty Images


根拠があれば“勘”も立派な“読み”になる


 今回も、読者からいただいた質問にお答えしていこう。

「野村選手のホームラン657本のうち、読みが当たったホームラン、外れたけれども打ったホームランはどのくらいの割合でしょうか? また、忘れられないホームランの思い出も、お話しいただけるとうれしいです」(Oさん、40代)

“読みが当たったホームラン”は、657本すべて。つまり、“読みが外れたけれども打ったホームラン”は0本ということになる。

 これまで何度か話したように、私は完全な“ヤマ張り”タイプのバッターだ。マウンドからホームまで18.44メートル。そこへピッチャーが投げ込む速球は、わずか0コンマ何秒かでバッターの手元まで来てしまう。しかも真っすぐだけでなく、ボールが曲がったり落ちたりするのである。

「そんなものには絶対、ついていけない」と思い悩んだのがプロ4、5年目。やがて私はメジャー最後(2016年終了時点)の4割打者、テッド・ウイリアムズの著書に巡り合った。その中で、ウイリアムズはこう述べていた。

「ピッチャーはキャッチャーとサインを交換し終わったとき、次に投げる球種を100%決めている。それは投げるとき、必ず“小さな変化”となって表に出る」「だから私は相手ピッチャーの投げる球が、7割以上分かる」と。

 あらかじめ球種が分かっていれば、そりゃあ打ちやすいわな、と納得した。ウィリアムズの言う“小さな変化”は、すなわち“クセ”である。彼の打撃論に“気づき”を得て、私は“ヤマ張り”へと転じた。

「ヤマを張る」というと、あてずっぽうで勘だけに頼った「ヤマ勘」と同義に思われがちだ。しかし、そこに根拠があれば、立派な“読み”になる。私は根拠を探した。幸い私はキャッチャーだ。キャッチャーの立場で分析すれば、おのずと答えは見えてくる。

 最初のヒントは、「ストレートが・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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