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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「ハングリー精神&三塁手」

 

ハングリー精神があったからこそ、私も成長することができた/写真=BBM


一流選手はほとんど貧困家庭出身だった


 人生を生き抜く手段はたった一つ、「頑張る」しかない。当然のことのように思えるが、一方でどう頑張ればいいのかが、なかなか見つからない。頑張るしかないのに、どう頑張ればいいかが分からないのだ。

 何事にも基礎と応用がある。中でもやはり大切なのは、基礎である。特にプロ野球界は競争社会。競争社会は、ハングリー精神なくして成り立たない。その点、私たちの時代は意識せずとも結果的に、その基礎が出来ていた。われわれ世代の名選手は、共通して貧しい。つまり野球に最も必要なハングリー精神が、期せずして備わっていたのである。

 このページでも何度か書いてきたが、戦前、戦中の貧しさと今の貧しさとは、ケタが違う。われわれの世代に名選手が多く出てきたのは、やはりその貧しさゆえだと思う。例えばカネやん(金田正一=国鉄ほか)も、貧しい家庭の出身で苦労してきた一人。わずか6畳2間の自宅に、両親と9人きょうだいの計11人で暮らしていたと聞く。だから夏の予選で負けると、早々に(享栄)高校を中退。17歳になったばかりでシーズン半ば、国鉄に入団した。

 私など体の弱い母親が女手ひとつで兄と私の2人を育てる母子家庭だったため、高校進学すら危うかった。あれは今でも忘れられない。夕食を食べながら、母親が中学生だった私にポツンとこう言った・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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