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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「盗塁阻止」

 

強肩を武器に日本シリーズMVPに輝いた甲斐/写真=BBM


口では説明できない小さなクセを見つけて


 ソフトバンクの捕手・甲斐拓也の強肩を指した『甲斐キャノン』は、プロ野球界の今年の流行語大賞になりそうだ。

 ただ、甲斐も日本シリーズのMVPをもらったとき言っていたように、盗塁阻止はあくまでもピッチャーとキャッチャーの共同作業。いや、むしろピッチャーにかかる比重が高い。盗塁の成功、不成功は80%ピッチャー、残り20%がキャッチャーにあると言っていいだろう。

 われわれの時代、ピッチャーのクセを盗むことに長けていたのは、阪急ブレーブスの選手である。それには1964年、阪急にやってきたダリル・スペンサーの存在があった。彼はカージナルス、ドジャース、レッズと渡り歩いたバリバリのメジャー・リーガー。しかし、そのプライドを一切捨てて日本野球に溶け込もうとし、阪急の選手に、積極的にメジャーの野球を植え付けた。

 スペンサーはピッチャーのクセを見つける天才だった。長池徳二高井保弘大熊忠義といった右バッターは、スペンサーの影響をとりわけ大きく受けた。スペンサーのおかげで、阪急は変わった。

 私も“ヤマ張り”バッターだったから、ピッチャーのクセから球種を読みながら、打席に立っていた。クセといっても、実に小さなクセである。同じところを見ていても、それにまったく気が付かないバッターもいる。例えば、投球モーションに入ったときのピッチャーの利き手が、グラブの中で微妙に位置を変えている。これが口では説明できないほど、小さなクセなのだ。

 その小さなクセの中で、さらにそれが・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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