週刊ベースボールONLINE

惜別球人2013

石井一久インタビュー 完結させた「野球人」という作品

 

飄々と左腕を振り、剛速球を投げ込んだ。「三振の取り方は知っている」と三振の山を築いても、「記録や数字はどうでもいい」と意に介さない。常に新たな出会いや経験を求め、向上心を持って仕事に臨んできた22年間、いつもその胸にあったのは「期待に応えたい」という思いだ。マウンドを去った今、寂しさはないという。完結した“野球人・石井一久”について、そして今後について聞いた。

取材・構成=田辺由紀子 写真=BBM、AP
※インタビューの最後に石井一久選手のサイン色紙(2名様)と直筆サイン入りボールプレゼントについてお知らせがあります

――テレビで日本シリーズについて解説していらっしゃるのを拝見しましたが、投手心理の分かるコメントが印象的でした。

石井 ああ、そうですね。現役中は、野球に関して自分の考えだったり、詳しいんですよ、とかは発信する必要もないし、あんまり……。まあ、実力勝負なんで、はい。

――解説に向いているなとは?

石井 求められたら、自分が思っていることは言えるので。ただ、解説だけやっていても野球に関する器というのはもうこれ以上広がらないところまで経験したので、もっと違う器に、野球観を入れていかないといけないなとは思っています。

――吉本興業の社員としての仕事はすでにスタートしているんですか。

石井 もうそろそろ。スポーツ・マネジメントという職種があるので、そのサポートだったり、さらに少し踏み込んだものをやっていきながら将来的なところにつなげていければと考えています。

――なるほど。今回は今後のこともうかがいたいのですが、まずは石井さんの野球人生を振り返っていただきたいと思います。この世界に入る前に、プロ野球選手になりたいという気持ちはそれほどなかったというお話をされていたかと思いますが。

石井 そうですね。プロ野球選手の中でも志は低かったと思います。あまりそこに興味はなくて、たまたま敷かれたレールがプロの世界だった、みたいなところはありましたね。

――プロ野球界に就職した、というような?

石井 そうですね。好きなことを仕事にしているという感覚ではなく、本当に単純に仕事としてとらえていましたけど。野球は嫌いではなかったけど、好きでもなかったし。仕事としてやるようになって、どっちかっていうと嫌いになったし。仕事としてはちゃんと成功を収めたいですし、成功しないといけない。なんか「やり甲斐」というところじゃない部分になってきて。使命感ですね。

――任された仕事はやらないと、と。

石井 もちろん仕事なんで。でも、1年目にプロってあんまりたいしたことないなと、そこは努力次第でどうにでもなると思えたところからのスタートだったので。あまりプレッシャーなくできました。

――「たいしたことない」とは具体的には?

石井 自分の能力をフルに発揮すれば、できるなという。1年目の最初、一軍キャンプからだったんですけど、そこでも僕より球が速い人は少なかったし、僕より変化球が曲がる人も少なかったし、ちゃんと精神的にも技術的にもコントロールさえできれば、この仲間の中でも上の方に行けるという確信があったので。でも別に、人にはそんなこと言う必要はないし、生意気だと思われても……。

▲プロ1年目の92年、レギュラーシーズンでプロ未勝利ながら日本シリーズ第3 戦に先発登板。結果は敗れたものの、高卒1年目での経験はその後のキャリアに大きく生きた



――自分の持っているものに自信はあった。

石井 自信じゃないけど、それくらいは分析できるんで。ただ、そこを生かすために、1年目で野村(克也)監督に出会えたのは、それはよかったなと思います。自分の生かし方っていうのも、教えていただきましたし。あとは、それ以上に・・・

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