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Vol.42 オコエ瑠偉[関東一・外野手]
ファンを楽しませるスピードスター

 

今夏の甲子園で話題を独占して「高校生No.1外野手」の名をほしいままにした。50メートル5秒9の俊足を前面としたプレースタイルは近い将来、ファンを呼べる存在となるはずだ。

 甲子園では足と打撃に加え強肩も披露するなど、高校生離れした身体能力を見せつけた。今年のドラフト候補では外野手では大学、社会人を合わせてもトップクラスの素材と言えるだろう。甲子園後にはU-18日本代表にも選出され、世界大会でも持ち味を存分に発揮した。右の外野手が補強ポイントの球団は最上位で指名に踏み切る可能性もある。それほどの選手だ。

 打撃フォーム(8.0)はまだ荒さが見られる。トップが定まらなかったり、基本の形ができていない。ただしスイングの力強さは申し分ない。興南の変則左腕・比屋根雅也から甲子園で左越え本塁打を放ったときの内角のさばき方を体で覚えてもらいたい。



 コース、球種を問わず、打てそうな球には積極的にバットを出すタイプ。それだけに選球眼(7.5)は良くない。地方大会から早打ちが目立った。狙い球を絞ったり、追い込まれた後のワンバウンドになる変化球を見極めたりする技術をもっと磨く必要がある。プロの投手に対しては、自分のゾーンを把握できていないと苦しくなる。

 甲子園では左中間の深い打球に対しスーパーキャッチを見せるなど、外野守備(9.5)は高いレベルにある。打球への一歩目のスタートも良く、プロでも十分やっていける。肩も強いが、各塁への送球の精度はまだ低い。捕球からの一連の動きをノックで繰り返しこなすことが大事だ。センターから打者のスイングや投手の配球などを観察し、守備位置を動くことがあったが、こうした感性は素晴らしい。

 50メートル走で6秒を切るほどの俊足。走塁(8.5)には自信を持っているようだが、あえて注文をつけるとすれば、盗塁のスタート。二塁打や三塁打などベースランニングは問題ないのだが、静止した状態から一気にトップスピードに乗る盗塁ではスタートが成功のカギを握る。

 3拍子のバランス(9.0)では攻守走の「打撃」を高める意識が必要だ。ワールドカップでも見られたが、木製バットでは詰まった打球は外野まで飛ばない。プロでは対応力を上げていかないと、同じような攻め方を徹底される。判断力(9.0)はいい。ワールドカップでは二盗の際に、捕手からの送球が逸れたのを横目で確認し、スライディングをすることなく一気に三塁を陥れたシーンがあった。

 気持ちが前面に出るなどメンタル(9.0)は強い。投手に向かっていく姿勢は今後も変えずにやってもらいたい。体力(9.0)も文句なし。筋力は上半身、下半身ともに強い。プロでは年間140試合以上の試合をこなすだけに、疲れを翌日に残さないように柔軟性を高めることも忘れないでほしい。総合力(8.5)はまだ伸びしろがある。特に打撃を伸ばしていけば、とんでもない選手になれる可能性を秘めている。将来性(9.5)は高い。まずは基本的な打撃フォームを構築するところから始めて、選球眼を磨くこと。守備では送球を改善していければ一軍デビューは早くなる。今年のドラフトではどこまで人気が出るか。楽しみな素材だ。

■採点表
打撃フォーム 8.0
選球眼 7.5
守備力 9.5
走塁 8.5
3拍子のバランス 9.0
判断力 9.0
メンタル 9.0
体力 9.0
将来性 9.5
総合力 8.5
合計 87.5
※採点の基準は2015年のドラフト対象選手

PROFILE
おこえ・るい●1997年7月21日生まれ。東京都出身。183cm 85kg。右投右打。ナイジェリア人と日本人の母を持つハーフ。小学1年時から捕手として野球を始める。小学6年からジャイアンツジュニアでプレーし、外野手に転向。東村山六中時代は「東村山シニア」に所属。関東一では2年春のセンバツはベンチ外で同春の都大会からベンチ入り。今夏の甲子園では4強進出に貢献。
プロフェッショナルレポート

プロフェッショナルレポート

元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

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