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第38回 テレビとプロ野球――なぜ、オールスター中継は途中で打ち切られたのか?

 

 近年、インターネットの普及が目覚ましい。スマートフォンなどのモバイル端末の流行もあり、その速報性と手軽さは情報取得の重要なツールとなった。一方、テレビの果たす役割も依然として大きい。興奮をリアルに伝える映像という手段はほかに代え難いものがあり、年齢層を超えた支持は今も変わらない。新聞や書籍など活字媒体を含むさまざまなメディアの中でも、テレビは大きな影響力を及ぼしている。

 今年の「プロ野球マツダオールスターゲーム2014」(7月18日・西武ドーム、同19日・甲子園)はテレビ朝日系列で放送されたが、2戦とも試合中にテレビ中継が終了した。BSやCSでの中継もなく、関係各方面に苦情が殺到。近年では放送打ち切りはなかっただけに、インターネット上でも「残念」とする意見が多数を占め、皮肉な形でプロ野球人気の健在が証明された。

大いに盛り上がった今年のオールスターだがテレビ中継は試合終了まで行われなかった[写真=小山真司]



 テレビとプロ野球は、昔から密接な関係にある。日本テレビが全国放送で巨人の人気を確立したように、切っても切れない間柄だ。テレビ放送では、試合の放送の対価として放映権料が発生。一般的に取材対価を必要としない新聞などの活字媒体とは違い、相互に莫大な金銭が絡む契約が介在する。

 今年のオールスター戦は、日本野球機構(NPB)とテレビ朝日の間で結んだ契約が、最初から「決められた枠内に限っての放送」という内容だったという。NPBとテレビ朝日は過去の試合の平均時間を参考に、今年の試合時間を予想。NPBはその上で、投球練習など各イニング間のインターバルを通常よりも10秒ずつ制限し、グラウンドに時間短縮の指示を出していた。これらの措置もあり、関係者は放送時間内に試合が収まることを想定していたという。ある担当者は「見込みが甘かったと言えばそのとおりかもしれない。来年以降の参考としたい」と説明。来年に向け、地上波から系列BSでの中継プレーをセットにするなどの策を検討するという。

 かつて、オールスター戦は売り手市場にあった。高視聴率が保証された“キラーコンテンツ”の放映権を得ようと、放送各局がシ烈な争奪戦を展開。放映権料は1試合あたりで、1億3000万円という時代もあった。しかし、バブルが崩壊し、09年の世界的金融危機を誘発したリーマンショックなどの影響もあり、半値以下に急落。経済の流れが、テレビとプロ野球との関係を微妙に変えた。

 オールスター戦は従来、日本シリーズ同様、試合終了まで延長ありの完全放送が鉄則だった。だが、09年から放送時間を限定した契約も認められるようになったという。放送延長も想定した契約の場合、局側は枠後の番組のスポンサーとの調整も必要。時間限定よりも放映権料が跳ね上がる。

 破格の視聴率が稼げるコンテンツではなくなり、局側は以前ほどオールスター戦の放映権を欲しがらなくなった。当然、関係者にとって条件は金銭面でもシビアとならざるを得ない。“露出”は人気のバロメーター。制約がある中での関係者の努力が、プロ野球復権の後押しとなるはずだ。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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