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第76回 本塁打数が激減!?――“打低”の中で目立つ思い切りのいい若き打者

 

 プロ野球では、開幕から約1カ月を経過した時点で「投高打低」の傾向を見せている。中でも野手の苦戦が目立つのは、開幕直後に顕著だった本塁打数の激減ぶり。対戦が一回りした5カード終了まで(4月12日時点)を取り上げると、セが35本でパが38本。昨年は同時期でセ73、パ58と、大幅なペースダウンとなった。

 その最大の理由として挙げられるのが、ボールによるものだろう。セ、パの公式戦で使用する「統一球」については昨年、開幕直後に使用したボールの平均反発係数が基準値を上回り、近年よりも“飛びやすく”なる現象が発生。本塁打数が増加する事態を招いた。その後、メーカーのミズノ社と日本野球機構(NPB)が生糸の乾燥等により反発が増すなどの原因を究明。品質管理を徹底し、4月下旬からは基準に適合したボールが供給されている。

 昨年まで反発係数の値は上下限(0.4034〜0.4234)が設けられていたが、今年から範囲を撤廃して0.4134の「目標値」に改定。規定が緩和されたとも言えるが、関係者によると「より安定した品質のボールが供給できている」という。つまり“飛ぶボール”は完全排除されることになり、今年の開幕直後の本塁打数のある程度の減少は予想されていた。

 それでも、今年の打撃陣が低調なのは確かだ。セ・リーグでは首位争いをするヤクルトが、チーム防御率1点台をマーク。パ・リーグでも全6球団が3点台に収まるなど、投手陣の安定した内容が光る。対して、打撃陣の数字は芳しくない。例えば、4月25日時点でセのヤクルト、パの日本ハムと首位のチーム打率が、ともに2割4分台。昨シーズンの通算打率は、それぞれが.279と.251だったことを考えれば、厳しい状況は明らかだ。

 投手優位の状況を簡単に作り出す方法は、ストライクゾーンの拡大だ。一部球団のコーチ、選手らの「広くなった気がする」という声もあるが、NPBはゾーンの変更を公式には認めていない。ただ、NPBの熊崎勝彦コミッショナーがスピードアップを強烈に推奨していることで、球審や打者に心理的な影響を与えることもあるだろう。バッテリーとの駆け引きに長けたベテラン打者であればあるほど、際どいボールへの疑念が、感覚に微妙な“ズレ”を生じさせている可能性がある。

 そんな中で、今シーズンは思い切りのいい20代の打者の活躍が目立つ。セでは23歳の筒香嘉智(DeNA)をはじめ石川雄洋(同)、川端慎吾(ヤクルト)、平田良介(中日)、パでは秋山翔吾(西武)、柳田悠岐(ソフトバンク)、中村晃(同)、銀次(楽天)らが打撃上位にランクイン。投手では大谷翔平(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)らがエース級としてのポジションをつかみつつあるが、野手も才能あふれる若手が力をつけてきた。

今年の球界は打者が苦しんでいるが、開幕から四番を務めるDeNAの筒香ら若手の躍進も目立つ



 現在の打撃陣の苦戦は、次世代の主役たちに与えられた試練なのかもしれない。本塁打を量産するなど、投手陣に打ち勝つ意地を見せてほしい。後れを取りそうなベテランも、このまますんなりと負けるわけにはいかないだろう。世代交代の時期を迎え、プロ野球はさらに盛り上がりそうだ。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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