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日本球界の未来を考える

第107回 地方試合の意義

 

比較的自由に変更ができる試合日程。さまざまなアイデア実行がファン開拓へつながる


 来シーズンのセ・パ両リーグのレギュラーシーズンで開催される地方試合は、前年よりも36試合多い76試合が組まれることが決まった。際立っているのがオリックスで、ほっともっと神戸15試合と那覇2試合の計17試合を主催。以下、日本ハムの12試合、巨人阪神の9試合と続く。パは6月28日と同29日にオリックス対楽天を、公式戦としては54年ぶりに沖縄の那覇で行うことになった。

 2012年から地方試合数は53、49、43、40と減少していたが、久しぶりの増加となった。だが、他球団の本拠地球場を借りて行う試合もカウントされているだけに、単純に増えたとは言えない。日本ハムが12試合行う東京ドームは、北海道に移転する前の本拠地ではあるが、現在は巨人単独の本拠地。東京ドームでは4月19日に楽天によるオリックス戦、6月24日にソフトバンクによるロッテ戦も開催され、京セラドーム大阪では8月18日にソフトバンクが西武戦を“間借り”して行う。

 本場メジャー・リーグでは地域の権利保護をうたったフランチャイズ意識が強く、地方試合はほとんどない。一方、日本では、他球団のホームグラウンドで主催試合をするのがここ数年の傾向のようだ。

 オリックスにとってほっともっと神戸はかつてのホームスタジアムであり、現在も“準フランチャイズ”的位置付けの球場。阪神が9試合行う京セラドーム大阪は春夏の高校野球の開催期間中の代替地としての意味合いがある。それを「地方開催」と呼ぶのが妥当かどうかは、見解が分かれるはずだ。

単に地方で試合を開催するだけでなく、何か工夫も欲しい[写真は今年4月11日に鹿児島で行われたソフトバンク対日本ハム戦]



 球団の専用球場以外での主催試合は協約上「地方開催」とみなされるが、東京ドーム、京セラドーム大阪など、他フランチャイズでの開催も同様に扱われるのは多少違和感がある。そういう視点から見れば、地方に試合を持って行って主催する球団は、実際はかなり少ない。

 球団にとって他球団の本拠地以外での地方開催は「メリット以上に負担が多い」というのが本音だ。ひと昔前なら親会社等の付き合いから、採算度外視で地方での開催をすることもあった。しかし、今は球団の企業形態も変わり、経費がかかる地方遠征を避ける傾向にある。キャパシティの小さい地方球場ではチケット収入が望めず、告知等の手間や費用も別途に必要。集客の難しいウィークデー開催が多く、ドーム球場ではないため雨天中止の可能性もある。そのために放映権等も売りにくい――など、興行面でのリスクが多い。

 ファンの拡大という観点から言えば、本拠地以外の開催には意義がある。インターネット放送やデジタルテレビの多チャンネル化などにより試合を見る機会が格段に増えたとはいえ、選手の生のプレーを感じるかどうかで、プロ野球に対する興味の度合いが違ってくる。理想としては、セ・パのリーグ戦や交流戦、そしてオールスター戦など、さらに地方での開催を増やしてほしい。

 だが、試合を「本拠地球場以外に持っていくだけでいい」という発想だけで地方遠征を増やしても意味はない。1つの球団による一軍の単発開催に終わるのではなく、ファームや近年密接な関係を築きつつある独立リーグの試合を巻き込んだ「親子開催」はどうか。また、例えば「北陸シリーズ」「沖縄シリーズ」などと銘打ち、一定時期に複数球団が集中参加する方式も面白い。グラウンドルールとは違い、試合日程は比較的自由に変更ができる。さまざまなアイデアを出し合って実行してみることが、新たなファン開拓につながる。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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