週刊ベースボールONLINE

日本球界の未来を考える

第108回 脚光浴びる三軍制

 

 プロ野球の「三軍制」が、にわかに脚光を浴びている。巨人は今秋、育成選手を中心とした20〜25人規模の三軍の新設を発表。対戦相手は国内のプロ独立リーグや大学、社会人などを中心に、年間約90試合を組む予定だ。堤辰佳ゼネラルマネジャー(GM)は「育成選手の試合機会を増やさないと、正確な評価がしにくい。一人でも多く一軍の戦力となる仕組みを整えたい」と説明。ドラフトでは12球団最多となる8人の育成選手を指名するなど、三軍制への取り組みへ意欲を見せている。

 巨人は2011年に「第2の二軍」を設置して選手の育成に乗り出したことがあるが、翌年限りで廃止。そのとき以来の実施となるが、12球団で唯一の三軍制を確立し、最強を誇るソフトバンクの育成システムがきっかけになったのは間違いない。

育成選手を含め、15人の新人が入団した巨人。三軍制への取り組みに意欲的だ[写真=大賀章好]



 圧倒的な強さで2年連続の日本一に輝いたソフトバンクの強さの根底に、三軍制をベースとしたファーム組織がある。70人枠の支配下登録選手に加え、ここ近年は20人以上もの育成選手が所属。二軍の試合に出られない選手は、三軍独自の試合に出て実戦経験を積んだ。15年度は独立リーグの四国アイランドリーグplusとルートインBCリーグ、大学・社会人に加え、韓国プロ野球などのチームと約80試合を消化した。

 二軍にしてみれば、試合の成績という数字で迫ってくる三軍選手の存在は大きな刺激となる。牧原大成二保旭が三軍から一軍に駆け上がったケースも、三軍全体のモチベーションを倍加させた。うかうかできないという危機感はファーム全体のレベルアップにつながり、一軍の戦力層を厚くすることに貢献した。

 ソフトバンクは、今年まで福岡市内にあったファーム本拠地を福岡県筑後市に移転。名称は「HAWKS ベースボールパーク筑後」と決まり、二軍と三軍が来春から使用する。総工費60億円と言われる施設内には、メーンとサブの球場が新設され、屋内練習場、クラブハウス、選手寮も完備。メーン球場はネーミングライツが設定され、「タマホームスタジアム筑後(タマスタ筑後)」としてスタートする。二軍と三軍による分厚いファーム組織をさらに盤石にしたいという、ソフトバンクの“本気度”がうかがえる。一軍とファームの本拠地分離は、野球振興の観点からも好ましい。今後の課題は、いかに興行として成り立たせることができるかだろう。

 三軍制のネックは、それなりの資金力が要ることだ。ファーム組織がしっかりとしている球団とそうでない球団は、一軍の戦力にじわじわと差が出てくる可能性がある。ソフトバンクや巨人以外の球団も後れを取らないための対応に迫られそうだ。

 日本ハムのように育成選手枠を活用せずに、少数精鋭で運営するという哲学の球団もある。だが、システムが違っても、すべての球団に共通しているのが、ファームの選手に「実戦経験を積む試合の数を増やすこと」だ。球界全体がどれだけ多くレベルの高い相手との試合をマッチメークできるか。そのためにも、若手の選手や審判員を派遣するなど近年交流を深めつつある独立リーグとの、これまで以上の連携が大切となってくる。
日本球界の未来を考える

日本球界の未来を考える

週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング