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榮光貴

 

15歳、覚悟を決めて島を出た。鹿児島・奄美群島の瀬戸内町古仁屋出身。プロ野球選手を目指すため、大分で白球を追い、高校時代もスカウト注目の存在となった。プロ志望届提出も無念の指名漏れ。大学4年間で力をつけ、再挑戦できる立場となった。プロ野球は自身だけの夢ではない。
取材・文=岡本朋祐、写真=筒井剛史

最速152キロ計測以降はボールのキレ、制球を意識


 日本文理大を率いる中村壽博監督は、独自に編み出した戦術を一貫している。継投策――。大学選手権を制した2003年には、5試合でのべ28人を起用している。仮に好投を続けていてもスパッと代える、思い切ったさい配に周囲は騒然とした。左右、サイド、アンダー投手らが次々と出てくれば、1試合での攻略は難しい。これが一発勝負の戦い方。日本文理大の加盟する九州地区大学野球連盟では全国26連盟で唯一、トーナメント(福岡・長崎、大分、熊本、鹿児島、宮崎、沖縄の6地区のリーグ戦で上位校の計13チームが進出)で代表校を決めている。勝つための最善策として中村監督は毎年、タイプの異なる投手を育成している。

 4〜5人をゲームプランしていく中で、信頼の置く2人を先発と抑えに配置。2年前から田中豊樹(4年・佐賀商)を守護神に据え、先発は榮光貴に任せる。九州地区トーナメントは5日間で開催され、1回戦からのチームは5連戦の過密日程となる。

「一つも落とせないトーナメントでは、先制点がカギ。田中はパワーボールで攻めるタイプで、立ち上がりにボールが荒れるケースがある。つまり、先発で『尻上がり』では手遅れになる可能性がある。試合途中から入っていった方が、力を発揮できるので抑えに適性がある。対照的に、榮は初回からトップギアで入っていける。連投もできますし、スタートからベストパフォーマンスを出していけるのはまさに、先発向きです」(中村監督)

 榮はオープン戦でも最長は7イニング。先発完投の能力があるに越したことはないが、NPBの現状を見ても、継投策は避けて通れない道となっている。他の25大学連盟のリーグ戦とは違い、データが不足する一発勝負で投げてきたのは大きな財産。榮は日本文理大の戦術によって“引き出し”を増やしてきた自負がある。最速は2年夏のオープン戦で計測した152キロ。大台突破を遂げて以降は、スピードに興味はない。

「球速を追い求め過ぎると、フォームを崩す危険性があります。ボールの回転を意識して、7〜8割の力でもキレのあるボール。制球力を高めるように取り組んできました」

最速は2年時に計測した152キロも、スピードには特別のこだわりはない。球の回転(キレ)、コントロールを意識し、「勝てる投手」を目指している



 カーブ、カットボール、フォークを織り交ぜ、ミットに吸い込まれる球質の良いストレートが武器で、オリックス金子千尋の球筋が理想だという。指先の微妙な感覚は、生まれ育った環境も起因している。

甲子園まであと1勝
5連投の決勝で力尽きる


 鹿児島県大島郡瀬戸町古仁屋出身。奄美群島の恵まれた自然環境の下で育った・・・

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