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石橋良太

 

大学時代にプロから熱視線を浴びるも、4年春を前に右ヒジを故障。秋に復帰し、4勝を挙げたが、プロ志望届は提出せず。社会人の強豪・Hondaへ進み、ルーキーイヤーからエースを務めた。今年の都市対抗野球でも好投。ドラフト対象となる今秋へ。最速149キロ右腕の投球がさらに熱を帯びていく。
取材・文=大平明、写真=井田新輔

悔いを残した夏の都市対抗野球


「あの場面を、しっかりゼロで抑えられるピッチャーでなければダメなんです」。7月に開催された第86回都市対抗野球大会で、優勝候補の一角と目されながら、2回戦で姿を消したHondaの石橋良太は悔しさを滲ませながら、そう語った。

 上背は175センチとそれほど高くはないが、右腕から投じるストレートはMAX149キロ。さらに、キレの良いカットボールを持つ石橋は昨秋の日本選手権で15回1/3を投げ、わずか1失点と好投。アマチュア球界の強豪・Hondaでルーキーイヤーからエースを任されるに至った。

 今シーズンも最初の公式戦となった3月の東京スポニチ大会ではチーム開幕戦の東京ガス戦に先発すると7回を4安打無失点。準決勝のヤマハ戦も7回2安打無失点と相手打線を封じ込め、最高のスタートを切っていた。さらに、都市対抗の南関東二次予選では、準決勝の新日鐵住金かずさマジック戦に登板。2ランホームランを浴び、先制を許したが「投げるからには、最後まで投げ切りたかった」と、144球の粘投で6安打3失点の完投勝ち。2日後にはリリーフで、8、9回の最後の2イニングを1失点で締め、チームを南関東第1代表の座に導いた。

 そんな石橋に対し、長谷川寿監督も「今年で社会人2年目となり、練習時から余裕が見られる。調子が悪いときでも、悪いなりにゲームが作れるようになってきた」と、成長を認めている。

常時140キロを超えるストレートを武器に、社会人1年目から秋の日本選手権で2試合に先発するなど、Hondaの主戦を務めている



気概を見せた3球連続のストレート


 三菱重工名古屋との対戦となった都市対抗の1回戦。「登板するときはいつも緊張する」という石橋は、初回にいきなり一死二塁のピンチを迎えるが「立ち上がりの入り方は、しっかりするように気を付けています」と話すように、低めを突いた投球を見せて0点で切り抜ける。3点リードした3回には味方の失策で1点を失い、さらに無死二、三塁とされる。だが、相手のクリーンアップに対し「大会に向けて、インコースに真っすぐをしっかりと投げる練習をしてきた」成果を見せ、まずは145キロの真っすぐをインローに投げ込み見逃し三振を奪うと後続も打ち取り、チームに流れを引き戻してみせた。「球自体は、全然まとまっていなかったんですが、勢いでいきました」という石橋は真っすぐ中心の配球で徐々に調子を上げ、8回1失点(自責点は0)で勝利投手となった。

 続く王子との2回戦は中1日ということもあり、石橋は先発を回避しブルペンで待機。だが、0対1と1点リードされたまま試合は終盤に突入。これ以上の失点は許されない展開の中、7回に先発の幸松司(JFE東日本からの補強選手)が一死一、二塁のピンチを招くと、場内に石橋の名前がアナウンスされた。「幸松さんがベストピッチングをしてくれたので、『絶対に負け投手にはさせられない』と思っていました」と、強い責任感を持ってマウンドに立った石橋。王子の青山祐也を0ボール2ストライクと簡単に追い込むが、次の外角に外そうとしたストレートがわずかに内へ入った。

「追い込んでから、力んでしまったかなと……。球が高めに浮いた分、外野の前にボールが落ちたと思います」

 決定的な2点目を奪われ、試合はそのまま0対2でゲームセット。冒頭の言葉は、この試合後に語られたものだ。「追い込んでから余裕を持って焦らないこと。その精度を上げていきたい」と、またひとつ宿題を課せられ大会を去った。石橋は、9回に再び回ってきた青山との対決では、3球続けて気迫に満ちた真っすぐを投げ込み、143、144、145と1球ごとに球速を上げていった姿はまさに圧巻。エースのプライドを感じさせるシーンだった。

目の前の課題をクリアしプロへの道を切り拓く


 今でこそ投手として活躍している石橋だが、明徳義塾高時代は1年秋からセカンドのレギュラーを務めた。本人もそのまま野手としてプレーするものだと思っていたのだが、2年夏からは投手のコマ不足というチーム事情により、ピッチャーとして起用されるようになる。卒業後は拓大に進学し、1年の春は投打の二刀流で試合に出場した。現在、拓大で二刀流に挑戦している高校、大学の後輩・岸潤一郎にも「寮に顔を出したときに、経験者としてアドバイスを送った」という。ただ、石橋はバッティングで成績を残すことができなかったため、打者には早々と見切りをつけ、投手に専念。すると直後の秋季は二部ながら防御率1.57でトップの成績を収める。さらに、2年秋は0.74、3年秋は0.70でやはり最優秀防御率をマーク。一躍、プロ注目の存在となった。

 しかし、4年のシーズンインを前に石橋は右ヒジを故障し、春季リーグを全休。秋には復帰し、一部に昇格したチームで4勝を挙げたが、プロ志望届は提出することなく、社会人のHondaに進んでいた。それから2年の月日が経ち、いよいよ今秋のドラフトから対象選手として解禁となる。

「今は結果を出すことしか考えていません。まずは、チームが勝たないと意味がないので、目の前の課題を一つずつ片付け、目の前の敵を一試合ずつ倒していく。その積み重ねがプロへつながっていくと思います」

 大願を果たすための石橋の戦いは秋に向けて、さらに熱を帯びていく。

今年の都市対抗野球では10回2/3を投げて、自責点はゼロ。東京ドームでも、エースとしての働きを見せた



PROFILE
いしばし・りょうた●1991年6月6日生まれ。大阪府出身。175cm77kg。右投左打。堺市立榎小1年から長曽根ストロングスで野球を始める。堺市立三国丘中では浜寺ボーイズに所属し遊撃手と投手でプレー。明徳義塾高では2年時、春の選抜に一番・二塁で出場。同年夏から投手に転向した。拓大では東都大学リーグの二部で3度の最優秀防御率を獲得。今年の都市対抗では三菱重工名古屋戦で8回1失点と好投するなど、現在はHondaのエースとして活躍している。
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