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これほどまでに移り変わりの激しい世界があるだろうか。長年かけてコツコツと積み上げてきた実績で、チームを支えるエースと認められるようになった。しかし、ここ2年、期待を裏切る結果に終わると、その称号は他者の手に渡りつつある。それでも、昨季、リーグ最下位に終わったヤクルトの再建はこの左腕の“復肩”なしには語れない。

取材・文=菊池仁志 写真=井田新輔

キーワードは原点回帰

▲これまで以上に自身の体に敏感に、シーズンを送ることで故障、ケガ予防に努める



 一つひとつ、積み上げてきた白星は、2014年シーズンを前に121を数える。現役左腕では218勝、49歳となる今季もユニフォームに袖を通すレジェンド・中日山本昌、126勝の巨人杉内俊哉に次ぐ。その内容がすごい。

 02年のルーキーイヤーから開幕5戦目の先発を任されると、6回2⁄3を投げて無失点の好投でプロ初登板初勝利。その後も先発ローテーションを守り抜き、12勝9敗で新人王を獲得した。それから06年まで5年連続2ケタ勝利。07年こそ4勝に終わったが、最優秀防御率を獲得した08年からは2ケタ勝利を4年にわたって続けた。

 4年目の05年に初めて開幕投手を務め、続く06年、そして08年以降は5年連続で大役のマウンドに上がったことは信頼の証し。12年の巨人戦(東京ドーム)は9回一死まで無安打に抑え、あわや史上初の開幕戦ノーヒットノーランの快投。

 昨季こそ1歳下の館山昌平にその役を譲ったが、ここまでの実績を見ればヤクルトのエースが167センチの小さな左腕であることに異論はないだろう。07年以外は悪くても勝率5割。これも誇れる部分だ。個人の成績ではなく、チームの勝利を第一優先とする男の「貯金」に対するこだわりは、勝ち星の数以上に強い。

「いつでも目標はチームの優勝。その中で2ケタに届かなくても9勝0敗で貯金が9もできればそれでいい」。それがこの2年は8勝11敗、6勝9敗と低迷。2ケタ勝利からも貯金からも見放され、昨季に至ってはチームが最下位に沈んだのだから悩みは深い。
Go for2014!〜新シーズンにかける男たち〜

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新たなシーズンに巻き返しや飛躍を誓う選手に迫ったインタビュー企画。

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