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第18回 福本豊「いまは投手がロクにけん制しない」

 

積み上げた盗塁は1065個。“世界の盗塁王”の異名を持つ福本豊氏だが当然、守備、打撃にも優れていた。決して大きな体ではないが阪急黄金時代の核となった男。プロ野球の歴史を彩り、その主役となった名選手の連続インタビュー第18回。福本氏がすべてを打ち込んだ野球人生を赤裸々に語る。
取材・構成=大内隆雄 写真=BBM



まず、読者の期待をはぐらかすようなことから書く。“世界の福本”という表現は、もちろん通算1065盗塁への敬意を表したものだが、福本氏の出場試合数は2401。「福本の盗塁が見たい!」と球場に駆け付けても、1試合当たりの盗塁数は0.44個。2試合に1個見られるかどうかだ。それだけ難しい技術なのだが。

これに比べ、福本氏の定位置、センターへの飛球、ゴロは、1試合で何個もある。取材・構成者は、まず、この「センター・福本」に感嘆してしまったのである。“快盗福本”は、その卓越した盗塁、走塁技術を表したものだが、センターの守備は“神出鬼没の福本”だった。「エッ!? なんでそんなとこにいるの?」の連続だった。第14回で山田久志氏(元阪急)が「フクちゃん(福本氏)と大橋さん(穣遊撃手)には本当に助けられた。完ぺきにやられた! というヤツを何回も救ってくれた」と語っているのは、そのことである。


なぜあれだけ前に守ってフェンス際の大打球をつかみ取ってしまうのか?


 センターへのゴロなんか、大橋さんの捕り残しをいただいたようなもんでね(笑)。大橋さんがいると本当に助かった。山田がそう言ってくれるのはうれしいけど、実のこと言うと、私はルーキーのキャンプでバンザイばっかりしてたんですよ。まさにお手上げ(笑)。社会人(松下電器、現パナソニック)時代はね、足が速かったから、自分勝手な判断で走り出しても何とか捕れた。ところがやっぱりプロは違うんです。

 西本さん(幸雄監督)は、こんな私を見て、外野の守備と打撃を担当していた中田さん(昌宏コーチ)に「福本を鍛えてくれ」と命じたのです。私はこの中田さんのノックで一人前になったんですよ。のちには石井さん(晶コーチ)も手伝ってくれた。毎日200本です。中田さんのノックがまたすごいんです。途中からグ〜ンと伸びてくる。やっているうちに、それまでは、落下点を想定するのが甘くて、つい曲線的に走って追いつけなかったのが、直線的にパーッと走れるようになった。カーン、あそこだ! という判断ができるようになったからです。

 ノッカーも案外簡単に捕られるようになると、「オレも練習するぞ」とノックの練習をやってくれ、私へのノックに臨むようになった。当時の阪急はそういうチームでした。

 中田さんのすごいところは、相手チームの打者の打球の傾向を調べ上げて、「フリー打撃でもその傾向が出るハズだからよう見とけ」とビジターチームの打撃練習を見るのを義務付けたことです。いま、相手チームの打撃練習をベンチから見る選手なんておらんよ。これ、大事なことなんですよ。見てるとね、やっぱり傾向が出るんですよ。

 それともうひとつ。「センターの頭を越える打球なんてそうあるもんじゃない。それなら、なるべく前で守ることだ。あ、落ちた、というヤツを捕ってくれる方がナンボいいか分からん」。これもそのとおりなんですよ。

 この「あ、落ちた」に関しては苦い経験がありました。高3の夏の甲子園の1回戦(対秋田高)は延長13回まで行ったんですが、その裏に私とセカンドが打球をお見合いしてサヨナラ負け(3対4)。この経験も中田さんの言うことの正しさを裏付けてくれました。だから私は前にしか守らんのです。

1984年8月7日の南海戦[大阪]で1000盗塁を達成、恩師の西本幸雄氏[右]に感謝する



その、前にしか守らないセンター・福本が、フェンスを越えそうな打球に追いついて、しかも、もぎ取ってしまうスーパープレーを見せるから、ファンは「なんでそんなところにいるの?」と驚いてしまうのだ。

 それは「落下点にボールより早く行け」を実践したからです。どうしたらボールより早く行けるかは・・・

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