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野球浪漫2014

筒香嘉智[横浜・内野手]

 

「若き主砲」「未完の大砲」―そう呼ばれて早5年。昨季まではその期待に応えられずにいた。
しかし、今年のオープン戦では打率.360と好成績を残し、復活の気配を感じさせた。
チームが悲願のCS出場を目指す今季、リベンジを胸に新たな“筒香嘉智”を見せるつもりだ。

文=佐野知香
写真=桜井ひとし、川口洋邦




 プロ野球開幕の3日前、ベンチ裏に戻ろうとする筒香嘉智に中畑清監督が声をかけた。「お前いま調子良いなあ。調子が良過ぎて怖いくらいだよ。ホントは8分目くらいがちょうどいいんだけどなあ」

 指揮官の軽口に、いつものポーカーフェースで「ハイ、ハイ」とクールな返事をしていた筒香だが、調子の良さは自らも実感していることだった。

 オープン戦は15試合に出場し、18安打、打率.360。本塁打こそ出なかったが、両リーグ合わせて5位に入る高打率を残した。昨シーズンはオープン戦期間中に左足首を捻り負傷。開幕戦には復帰しスタメンで出場したが、3試合無安打に終わり、すぐさま二軍行きとなった。その前年はキャンプ中にデッドボールを受け左足首骨挫傷で開幕二軍。過去2年間と比べれば、コンディションは雲泥の差だ。「秋からやってきたことがつながってきたのだと思います」。そう語る表情には、今シーズンへの意気込みと自信が宿っていた。

悪循環に陥り自分を見失った13年

 2013年はプロ入り後、もっともつらいシーズンだった。

 その前年の12年は初めてシーズンを通して一軍でプレーした。チーム名が横浜DeNAベイスターズになったこの年、長い間横浜の四番に座ってきた村田修一がFA権を行使し巨人へ移籍。その穴を埋めるため、チームはラミレスを獲得したが、同時に生え抜きの和製大砲として、11年に40試合で8本塁打を放った筒香の躍進も期待されていた。育成を目的に出場機会を優先的に与えられ、三塁のレギュラーとして108試合に出場したが、打率は.218。一時は打率1割台に落ち込み、当時二軍打撃コーチだった高木由一氏が一軍に緊急招集され指導に当たることもあった。それでも2ケタ本塁打には到達し、オフには侍ジャパン親善試合のメンバーにも選ばれた。

 しかし13年は前年に輪をかけて調子を落とした。前述のとおり開幕ダッシュに失敗し、6月終盤に再度一軍に昇格したが結果を残せず7月限りで再び二軍へ。ブランコが加入し、中村紀洋が好調のチームに筒香の居場所はなく、以降は昇格することがないままシーズンが終わった。二軍でも77試合で76安打7本塁打45打点、打率.272。本塁打王(26)、打点王(88)の2冠に輝いた高卒1年目に到底及ばない数字だった。

 このスランプの原因を筒香はこう分析している・・・

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