週刊ベースボールONLINE

野球浪漫2014

篠田純平[広島・投手]

 

 今季、首位争いを演じる広島で、序盤戦の先発ローテを支えた。立場を築こうと試行錯誤を続ける篠田純平。繰り返してきた挫折は左腕を強くする糧となった。7年目のシーズンに新たなスタイルで挑んでいる。
文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=松村真行



 道も分からない中、遠征先の栃木の球場周辺をひたすら走り続けた。練習試合で5回持たずにノックアウト。前橋商高の富岡潤一監督は、試合中ではあったが、いわゆる「罰走」を、降板した左腕に命じた。多感な高校生の時期である。

「自分への悔しさ」、「ランニングを命じた監督への腹立たしさ」、そんな気持ちがあってもおかしくない。だが、彼は違った。「チームの雰囲気を悪くしてしまった。僕が怒られたことより、チームメートに申し訳ない」。どこまでも、仲間や周囲の人のことを考えた。

 そんな男である。だからこそ、期待を裏切りたくないのだ。今年のチャンスだってそうである。ドラフト1位で入団し、左の先発投手の一人として期待されてきたが、2010年の6勝をピークに成績は低迷。昨シーズンはプロ入り初の0勝に終わった。

 篠田純平の危機感はピークに達していた。しかし、そんな彼を支える人がいる。期待を寄せるファンもいる。裏切るわけにはいかない。だからこそ、先発のマウンドを丁寧に務める。ピンチであっても、調子が良くない日でも、一球一球を丁寧に粘り強く投げ続ける。

▲5月9日の中日戦[マツダ広島]は7回1失点の好投で今季3 勝目。決勝打の松山とともにお立ち台に上がった



繰り返した挫折

 キャンプは二軍スタートだったが、フォームを変え、投球の考えを深めた篠田は、快進撃のカープにあって、先発ローテーションの中核を担うようになった。

 人を思いやる優しい気持ちは、いつしか責任感となって、彼のピッチングに安定感と信頼感をもたらした。

 前橋商高時代は・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野球浪漫

野球浪漫

苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング