昨季までのプロ6年間で、シーズン最多出場は2012年の11試合。“鳴かず飛ばず”とも表現できる日々を送ってきた男に、大きな転機が訪れた。7年目、7月9日に29歳となった男はいま、すべての面で自己記録を更新中である。ドラゴンズの黄金期に入団した遊撃手は、“アライバ”という高い壁に長く阻まれ続けてきたが、そのコンビが解消となった今季、レギュラー定着へ向けて小さいながらも風穴を開けつつある。いったい何が、彼を変えたのだろうか 文=富田庸 写真=佐藤真一 思い出の甲子園で 自身の活躍を1面で報じるスポーツ紙を手にしながら、
谷哲也はため息まじりに静かな笑みを浮かべていた。
「こうやって新聞の1面に載るのも7年かかっていますから。もっと早く活躍したかったというのが本音です。本当に長かったですね……」
圧巻の活躍を見せたのは、「二番・二塁」としてスタメン出場した6月29日の
阪神戦(甲子園)だった。初回、安打で出塁していた一番・大島を一塁に置いた場面。バントの構えをしていた谷は、2ボールからの3球目をバスターで左前へ。「あそこは決めた谷(の働き)が大きいというか、一発で成功してくれて、流れができたね」。谷繁兼任監督が絶賛したバスターエンドラン。これをきっかけに、
中日は初回のみで一挙8得点。球団としては18年ぶりの出来事となった。
谷の打棒は止まらない。3回の第3打席には左翼フェンス直撃の三塁打、5回の第4打席には右越え二塁打でサイクル安打に王手をかけた。7回に四球を選んだ後、迎えた9回の第6打席。「人生変わるぞ! 狙っていけ」
声の主は和田だった。
「サイクル安打がかかるとは夢にも思っていなかったです。和田さんの言葉どおり狙っていきましたけど、甘くはなかったですね。でも、あの場面で・・・
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