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野球浪漫2016

日本ハム・鍵谷陽平を支える1つのポリシー 「人のためだと思えば、自分の壁を超えられる」

 

チームにとって4年ぶりのリーグ制覇は、自身にとって未知の領域だった。失意を味わった者でしか手にすることのできない感慨が、そこにあった。プロ野球という、結果がすべてを語る非情な世界。それでも心優しき道産子右腕は、ファンの元に歓喜の瞬間を運ぶためにマウンドの上で闘い続ける。
文=高橋和詩(スポーツライター、写真=早浪章弘、BBM


郷土の期待を一身に背負いながら


 特別な1人だけに与えられた、極上の幸せに浸った。鍵谷陽平はブルペンで、その時を待っていた。9月28日の西武戦[西武プリンス]。今季残り2試合、142試合目で優勝マジック1がともっていた。

 先発した大谷翔平がわずか1点のリードを守ったまま、9回まで突入した。緊迫した1対0の展開。同期入団した年下のエースが、非の打ちどころのないパフォーマンスを見せた。15奪三振のシャットアウト劇で、4年ぶりのパ・リーグ制覇を果たした。その瞬間、一気に解き放たれた歓喜の輪ができる。鍵谷も身を委ね、酔いしれた。プロ入り以来初めてペナントを手にした。

「僕のプロ生活が最下位からのスタートだったので……。そこからスタートしたので、優勝というのはうれしい。最初は全然、個人的にもチームもうまくいかずに苦しいスタートだったので。そこからチームがまとまって、すごく勝って、勝って……、さらにまとまっていって。最後に決めたのもあるんですけれど、うれしさは大きいです」

 1年目の2013年は、球団が本拠地を移転して初の最下位。そこから2年連続で3位、2位とAクラスへ浮上し、ようやく手が届いた。無敵と言われたソフトバンクに最大11.5ゲーム差まで離されたが、大まくり。奇跡的な逆転劇を完成させた、貴重なピースの1つとなった。

 北海道出身者を、道産子と呼ぶ。函館市をシンボルとする北海道内では道南と呼ばれる地域にある、七飯町で生まれ育った・・・

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