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野球浪漫2016

西武・藤原良平、亡き父への思いを胸に…「どんな場面でも、与えられたところを喜んで進んで投げる」

 

今季も10試合のみの登板に終わってしまった。藤原良平、30歳。サイドからキレ味鋭いストレート、スライダーを投じる右腕の、そのポテンシャルを考えれば物足りない。今季は最愛の父を亡くす悲しみにも襲われた。来季は節目のプロ10年目──。必ずや遅咲きの花を咲かせてみせる。
文=上岡真里江、写真=小山真司、BBM


病気のために体重が10キロ減


「細く、長く」が、自身の野球人生にはぴったりの表現だという。奇しくもそれは、今年58歳の若さで永眠した最愛の父からの、生き方そのものへの教えに通ずるものでもあった。「質素でも、長生きすればいいんだよ」。

 来季で10年目のシーズンを迎える。ここまで通算成績は45試合、4勝7敗5ホールド、防御率5.30。大きな節目を前に、あらためてプロ9年間を振り返ると、真っ先に胸に去来するのは「大きな活躍もできていないのに、長くやらせてもらえているな」という思いだ。第一工大から大学・社会人ドラフト3巡目で08年に入団。大卒入団だけに、「1年目から一軍に上がってガンガン投げよう」と、意気揚々とプロの世界に飛び込んだが、理想とはほど遠い現実が待っていた。

2007年大学・社会人ドラフト3巡目で西武に入団した/前列左から2人目が藤原


 入団後まもなく右ヒジを故障し、1年目を棒に振った。2年目、ようやく投げられるようになったものの一軍昇格はなし。そして迎えた3年目は自身の中で「ボロボロ。キャリアの中で一番きつい年だった」と表現するほど苦痛に満ちたものだった。前年の二軍戦での成績が評価され、初の春季キャンプA班入りを果たす。だが、喜びもつかの間だった。誰もが通る道とはいえ、初めて一軍の主力選手の中で過ごす緊張感、そして「結果を残さなければ」という危機感が日を追うごとに体をむしばんだ。

 キャンプ中、背中に痛みを感じるようになり、「背筋を痛めたかな」と思いながらも、チャンスを逃すまいと必死でトレーニングを続けた。だが、症状は徐々に悪化していく。だんだん食事もノドを通らなくなりつつあったが、そのタイミングでキャンプが終了。対外試合、オープン戦とシーズンへ向けて進んでいく中で、「この日に投げるけど期間が空くから、それまでB班で調整しておいてくれ」との命を受けて、本拠地・所沢に戻ったところで病院へ行くと、「十二指腸に2カ所、穴が空いています」という診断だった。

 そこからはまず、ピッチング云々よりも、自分の体と向き合わなければならない日々が始まった。薬を飲むしか治療法はなく、投薬とともに、初めの1週間の食事は内臓に負担がかからないためと、出血で失った鉄分を補うために「ホウレン草とバナナのみ」。一気に体重が激減し、83キロあった体重は73キロにまで落ちた。

 これ以上減らさないようにと、懸命に食べ物を口に運ぶが、食べても、食べても体重は増えない。食欲はあっただけに、「一度、太るためにカロリーの高いものを食べようと、夜食後にわざとハンバーガーやポテトを食べてみたことがあったのですが、すぐに激痛で……」

 焦るあまり失敗もした・・・

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