一見すれば温厚な好青年。だが、マウンドでは真っ向勝負で打者に挑みかかる。紆余曲折の末に広島の地で才能を開花させた右腕は今季、ひたむきに自らと向き合い、そして栄光の一員となった。 文=坂上俊次、写真=BBM 安全とリスク、明暗を分けた選択
待ち合わせ場所には早めにやってくる。訪問先では入館証を首から真っすぐかける。物腰は柔らかい。
一岡竜司は几帳面で律儀な男である。さらに野球となると、なおさら考えは深く、取り組みは真摯になっていく。それだけに、考え方の方向性が重要になってくる。
真面目な好青年は友人からメンタルトレーナーを紹介された。今年1月のことだった。初めは「半信半疑」だったが、面会するたびに信頼感は深まっていった。毎週のようにとことん話し合った。自分の腹の中はすべて吐き出した。
日誌もつけるようになった。打者との対戦や球速、指のかかりの感触は5段階評価で記入した。食事内容の栄養バランスや短期から長期までの目標設定も書き込んだ。
すると、進むべき方向が見えてきた。実にシンプルな二者択一だった。
「故障しにくくて打たれやすいフォームで投げるか、リスクを恐れず打ちづらいフォームで投げるか」 2016年、一岡は全力で腕を振り続けた。シーズン中の登録抹消もあったが、8月以降はフル回転の活躍で防御率1.82の好成績を残した。何より、チームの25年ぶりの優勝に貢献できた・・・
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