週刊ベースボールONLINE

野球浪漫 進むべき道を切り開け〜勇往邁進〜
西武・木村文紀 指揮官との縁。必ずや人生を変える 「本当にありがたいです。期待に応えるためにも、絶対に活躍したい」
西武・木村文紀 指揮官との縁。必ずや人生を変える 「本当にありがたいです。期待に応えるためにも、絶対に活躍したい」

 

10年前、未来のエースとしての期待を受けてドラフト1位でライオンズのユニフォームにソデを通した男は今、バットを手に奮闘している。木村文紀、28歳。野手に本格転向して5年目の今季は野球人生を左右する勝負の年だ。レギュラーをつかみ、キャリアハイの成績を残す。そのために常に前だけを見据えている──。
文=上岡真里江、写真=内田孝治

「転機の年になるかもしれない」

 昨年の秋から、木村文紀は2017年にそんな予感を抱いている。もちろん、根拠はある。それは、辻発彦新監督との縁だ。

 昨年の秋季練習初日、打撃練習をする背番号『51』の姿が新指揮官の目に留まった。ズバ抜けた身体能力、パワー、打撃センスに恵まれながら、それをうまくバッティングに生かせていない。

「なぜ、そんなに差し込まれた打ち方をしているんだ?」

 この2シーズン、自身の中でもずっと課題としてきたことを一瞬にして指摘されると、その日から連日のようにマンツーマン指導を受けた。

指揮官からの助言で一気に晴れた霧


 13年に投手から野手に転向し、丸4年が過ぎていた。最高成績を挙げたのは2年目の14年。技術も経験も未熟だったが、当時の自分にできた「とにかく、思い切り振る」だけを徹底的に意識し、打席に立ち続けた結果、100試合出場、打率.215、本塁打10、打点27の数字を残した。チームは右翼のレギュラーが固定されておらず、「いよいよ、木村で決まるのでは」と、さらなる飛躍に期待が高まったが、プロの世界はそんなに甘くはない。翌年、相手が対策を立ててくるようになったことに加え、自身の中でも「三振を減らさなければいけない」「もっと結果を残さなければ」と、考えることが増えてきたことで、真の意味での打撃の難しさに直面することとなった。

 その15年、当初は意気揚々と迎え、「三振を減らす」を最大のテーマに、打撃フォーム改善に着手した。しかし、これが裏目に出てしまう。

「いろいろやってみたのですが、逆に、今度は差し込まれるような形になったり、甘い球に対して手が出なくなったりしてしまった」

 ポイントを前にしようとするあまり、必要以上に体が突っ込む傾向が強くなったのだ。相手投手の球を少しでも長く見られるようにという意図もあり、重心を意識的に後ろに置くと、今度は右肩が下がるクセが生まれることに。その影響で、バットのヘッドが出てこないため、思いどおりに球をとらえられず、凡打が増えていくばかり。安打1本を欲しがり、よけいに前のめりになったところに変化球でタイミングを外された結果、逆に三振が増えるという、悪循環の繰り返しだった。

 この2シーズン、その解決の糸口を探し求め、必死に試行錯誤を重ねたが、15年は出場49試合、打率.195、本塁打5、16年は28試合、打率.167、本塁打0と、成績は低下する一方。もともと野手に転向した時点で球団からは「長い目では見ない」と言われているだけに、危機感は年々増す一方だった。

 その矢先、辻監督との縁が巡ってきたのだ。

 初陣とも言える秋季練習の打撃練習の際、以前から課題改善のために取り組んできた“右打ち”をしていると、新指揮官から声がかかった。

「なぜ、右打ちばかりなんだ?・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野球浪漫

野球浪漫

苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング