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野球浪漫 進むべき道を切り開け〜勇往邁進〜
中日・三ツ間卓也 解き放たれた貪欲さ 「投げさせてもらえることに感謝です。本当に」
中日・三ツ間卓也 解き放たれた貪欲さ 「投げさせてもらえることに感謝です。本当に」

 

野球をやめるタイミングは何度もあった。ケガに泣いた高校時代、就職内定をもらっていた大学時代、そして成功の保障なく身を投じた独立リーガー時代。だが、プロ野球選手への夢が体を動かした。そして今、男は念願のマウンドで躍動している。
写真=BBM

独立リーグで得た3つの金言


 東京都内にあるビルの一室。三ツ間卓也は2014年秋、内定をもらっていた大手不動産販売会社の本社を訪れていた。人事担当省に頼み込み、社長と会長に面会。深々と頭を下げた。

「入社をやめさせてください」

 理由はひとつ。「夢を捨てられません」。身勝手さをとがめられるのは覚悟の上。だが、目の前の2人は穏やかに言った。「1年間、頑張って」。その言葉に救われた人生の選択は、間違いではなかった。

 東京新大学リーグの一部と二部を行き来していた高千穂大時代。特にスカウトの目には留まらず、3年秋には現実も見ていた。

「どうせ働くなら、歩合額の多い会社でガッツリ」

 自動車系と不動産系に絞り、練習を休んで就職活動を開始。間もなく4社から内定を得た。サラリーマン生活へと舵を切る準備は万全。残り1年間の学生生活で、野球に決着をつけるつもりだった。

 その春。創価大とのリーグ戦で、抑えとして勝利に貢献した。相手の先発がプロ大注目の右腕、田中正義(現ソフトバンク)とあって、スタンドにはスカウトが大勢いた。その中のひとりが、BCリーグ・武蔵の五十嵐章人ゼネラルマネジャー(元ロッテほか)。高千穂大の投手に興味を持ったものの「正直、三ツ間はそんなに……でした」。周囲の評価は、三ツ間自身も分かっていた。

「どうしたらプロになれるのか」

 可能性に考えを巡らす。そして、ふと思いつく。

「サイドで140キロ以上投げたらワンポイントでも使ってもらえるかも」

 元ヤクルトイム・チャンヨン(林昌勇)に少年時代からあこがれていたのも原風景となり、横手投げに挑戦。「意外とハマった」と希望を見いだした最中、再び五十嵐GMが大学を訪れた。

 別の投手を見るのが目的だったが、目を奪われたのは、隣で投球練習するサイド右腕。「球に力がある。制球が良くなれば、伸びしろがある」。大学側に「ドラフトでかからなければ、ウチを考えてほしい」と打診した。結果は指名漏れ。三ツ間にはグラブを置く選択肢もあったが、用意された未来への望み。「1年でダメならやめる」と身を投じた。

 1LDKで月4万円という家賃相場の中で、あえて選んだのは収納なしの6畳一間。「こんな部屋を早く出たいと思うために」。生活はベッドの上。1カ月の手取りは6万円で、大学時代に買った服やアクセサリーを古着屋に持ち込んで金に換えた。

「体をでかくしたい」と、三ツ間が頼ったのは激安スーパーだった。昼は1袋89円のレトルトカレーを1.5キロの白飯にかける。夜は21円のうどん2玉を平らげ、体重は20キロ増の92キロになった。

 貴重な出会いにも助けられた。投手コーチは、ロッテなどで活躍した小林宏之(現監督)。同じ右腕として助言を受けたのに加え、さらに3つの指令を与えられた・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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