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野球浪漫2018

中日・吉見一起 すべては野球につながっている――。 「投手はどれだけマウンドで勘違いできるかだと思うんです」

 

8月10日のヤクルト戦、丁寧なピッチングで6年ぶりの完封勝利を飾った。2000年代後半からのドラゴンズ黄金期を支えたエース。たび重なるケガのため過去5シーズンは計13勝にとどまるが、プロ13年目を迎えた今季、再び輝きを取り戻しつつある。運命と出会いに導かれた吉見一起の野球人生──。
文=玉野大(スポーツライター)、写真=川口洋邦、BBM


制球力の原点は団地の階段


 6年ぶりの完封よりも喜んだことがある。8月10日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)。リーグ屈指の強力打線を3安打にねじ伏せ、チームの連敗を5で止めた吉見一起は、お立ち台でこう言った。

「完封もうれしいんですけど、それより無四球で投げ切れたことがうれしいんです。ウチは四球が多いんで」。それは103球を投げ切った自分への褒め言葉であると同時に、四球を重ねては痛打を浴びるチームの若手への叱咤でもあった。

 投手の優劣がスピードで決まるなら、吉見はとうの昔に淘汰されている。回転数だとしても、今流行りのトラックマン(高性能弾道測定機)は吉見の球質にまったく「お墨付き」を与えてくれないのだそうだ。入団前に1度、プロに入ってからも2010年オフ(2度)、12、13、15年と6度も右ヒジにメスを入れた。落合博満監督が率いた黄金期にエースとして君臨した吉見は、今なお勝てるということを証明した。何を重んじ、どこが優れているのか。それは吉見本人の言葉に説得力がある。

 まず、投手に最も大切なのは・・・

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