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正捕手・里崎智也の後継者問題はチーム長年の課題だった。そこに明るい光を差し込んだのが、このドラフト2位キャッチャーの活躍だ。ときにプロのカベにぶつかりながらも決して下を向くことなく、再挑戦するたくましさを、このルーキーは持っている。 ※成績は5月12日現在
取材・構成=吉見淳司 写真=井田新輔、BBM

言われたことは全部覚える

──今日は試合が18時開始ですが、現在は11時。いつもこんなに早く球場に来ているんですか。

吉田 ナイターだとこれくらいですね。ホームのときはできるだけ早く来て、苦手なバントなどを練習しています。後はマシンでキャッチングをしたり、だいたい一人でできることをやっていますね。

──試合では八、九番を務めることが多く、バントも大事になりますね。

吉田 もともと打てるバッターではなく、細かいことができないとチームに迷惑がかかると思うので。

──バッティングの手応えは。

吉田 ランナーがいない場面だと甘いボールが来ることもあるんですが、ランナーがいると厳しいコースが多くなります。それを打てるようにならないといけないですし、後は失投を逃さないことですね。試合中には失投もあるんですが、それをファウルしてしまうこともある。確実にとらえられるようになれば率も残せるようになると思っています。

──オープン戦では打率.296、盗塁阻止率.500の数字を残し、開幕戦にも出場しました。

吉田 こんなに早く試合に出してもらえるとは思っていなかったのでうれしいという気持ちが半面、しっかり期待に応えないといけないという思いもあります。

──どこが評価されたと思いますか。

吉田 技術に関してはまだまだそのレベルに達していないと思うので……う〜ん……分からないですね。

──伊東勤監督は春季キャンプで、物覚えが早いと評価していました。

吉田 言われたことは全部吸収しようという思いはあります。「自分は今までこうやってきたから、そうする」というわけではなく、指導されたことは全部やろうという意識はあるので、そういう部分かもしれませんね。

──チームは開幕5連敗を喫しましたが、4月4日からの対日本ハム3連戦(QVCマリン)で吉田選手はフルイニングに出場し、3連勝に導きました。6日にはドラ1の石川歩投手とのバッテリーで、チーム初完投勝利を挙げています。

吉田 初めて勝った試合だったので、これが勝利かと、勝ちの雰囲気を感じられたのが良かったです。6日は先発投手が完投できたのは良かったですけど、あの試合には関しては石川さんがすごく頑張ってくれたので。僕はあまり何もしていないな、と。

──立ち上がりは直球が多かったですが、途中からシンカー中心に切り替えたように見えました。

吉田 (シンカーは)投げてみて、打者の対応が良くなかったので、どんどん使っていきましたね。真っすぐあっての変化球だと思うんですけど、あの日は変化球の中ではシンカーが良かったので。

──その配球を見ても、冷静で視野が広い印象を受けたのですが。

吉田 いえいえいえ(笑)。全然です。でも、オープン戦でもたくさん使っていただいたので、緊張し過ぎることはありません。シーズン中も良い緊張感を保つことができています。

──ジェスチャーが多いですよね。身振り手振りが大きく、体全体でリードしている印象です。

吉田 僕の意思をしっかりと投手に伝えないといけないということは意識していて、同じスライダーでも「ここはワンバウンドを放ってくれよ」というときは、(手のひらを地面に向けながら)低く、低くという感じだったり、ボールを投げてほしいときは(両手を広げながら)広く使ってくれと、自分の意思をしっかり伝えたい。今はうまくいく場合もあるし、打たれてしまう場合もあるのでもっと突き詰めていきたいですね。

──成瀬善久選手や涌井秀章選手など、実績ある選手をリードする立場ですが、しり込みしてしまうような場面はありますか。

吉田 すごい方たちなので、むしろプレッシャーを感じないというか。自分より若い投手だと僕が引っ張らないとダメじゃないですか。上の方だと、僕がリードをしないわけではないですけど、引っ張ってもらえる場合もあるので心強いです。

──先輩投手とのバッテリーで得るものはありますか。

吉田 成瀬さんと組むときは毎回が勉強で収穫が大きいですね。配球面もそうですし、投手心理というか、こういうふうに思っているからというのを1イニング1イニング教えてもらっていて、ベンチに戻るごとに「ここはこうした方が良い」と教えてもらいます。それは成瀬さんに限らずどの投手にも言ってもらえますね。
プロスペクトインタビュー

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各球団の将来を担う若手有望株へのインタビュー。現在の不安や将来への希望が語られます。

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