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「3年目の今季は自分の野球人生を左右するシーズンになる」。その思いが、一軍でレギュラー争いに加わる原動力となっている。昨季は二軍でチーム最多の14本塁打を放つなど、インパクトを残した。今季は一軍で初本塁打を記録し、若き右の中距離砲が本領を発揮する。
取材・構成=池田晋 写真=高原由佳、BBM

自分の野球人生を左右する1年になる



現在はファームで研さんを積む石川。一軍再昇格へ向けて闘志を燃やしている



──昨年8月、一軍デビューを果たしましたが、そのときの経験はその後どのように生かされていますか。

石川 5試合ながら、お客さんが入った中の雰囲気、一軍の舞台で自分がどう反応するのかが分かりました。また、今年に懸ける思い、目標が明確に見えるようになりましたね。

──一軍でプレー、活躍する自分の姿をイメージしやすくなった?

石川 雰囲気はどういうものなのかがよく分かりましたね。ただ、その5試合はまったくダメだったので、同じミスは絶対にしたくないです。相手と戦う前に雰囲気にのまれ、めっちゃ浮足立ってました。自分との闘いに敗れていたので、今年一軍に上がったときは、そういうことがないようにと準備してきました。今年初めて昇格して試合に出場したときすぐに一本(ヒットを)打てたのは、去年8月の経験が生きてます。

デビュー戦となった2013年8月22日の楽天戦(Kスタ宮城)では、地面からはね返った自打球が顔面に当たるアクシデント



──今季はどのような意識で臨んだのですか。

石川 これから野球で10年、20年とご飯を食べていくのなら、野球人生を左右する1年だと思って臨みました。一軍での自分の立ち位置がどうなるかですね。レギュラーなのか、左投手が出てきたときの代打なのか。いまは若いからもちろんレギュラーを目指すのですが、「できるんだな」とチームに思われるようにならなければいけないです。

──今季は4月に昇格してから、長く一軍に残れましたね。

石川 前半戦は5月に一度だけ10日間の抹消がありましたけど、ほとんどの期間を一軍にいさせてもらいました。長くいることで見えてくることもあります。ファームだとずっと使ってもらえるのですが、一軍だと現時点の自分の実力からすると、左ピッチャーが出てきたときのスタメン、代打での起用になる。どうしても、試合勘の部分であたふたしました。代打でいく難しさがあり、うまくゲームに入っていくことができませんでした。初ホームランを打ったとき(5月20日の中日戦/札幌ドーム)も代打でしたけど、なぜあのとき打てたのだろうと考えました。難しさはスタメンでも途中からでもありますけど、一軍で慣れない代打を任されるのは本当に難しいです。

──一軍だと、いつ出番が来るか分からない。

石川 そうですね。ゲームに入っていくのがものすごく難しかったです。急にパッと「行くぞ!」と言われることもありますし。常に気持ちを抜かずに、常に体を動ける状態にしておかなければならない。試合に出ている9人だけでなく、ベンチにいる選手たち、特に飯山(裕志)さんなどはあらためてすごいと思いました。

──飯山選手など途中出場する選手たちを見て学ぶことは多いですか。

石川 ゲームの流れを読んで、「そろそろだな」と思ったら、言われる前に自分から動きますからね。自分もそうしなきゃいけないのですが、まだまだ未熟なので難しいです。

──日本ハムの外野手は、レギュラー争いが厳しいです。生き残るのは大変だと思います。

石川 僕は右投げ右打ちなので、同じタイプで争うのは鵜久森(淳志)さんと岡(大海)さんです。2人の存在はすごく意識しています。プロの世界なので、人にないものを磨いてどう目立つかが大事だと思います。いまでも外野の一つのポジションは日によって誰が入るか分からない状況ですからね。内野手登録の選手が外野を守ることもあって、悔しい思いは常に持っています。「まだ3年目だから、まだ若いから」などと言われるのは好きじゃないんです。いまファームにいることも自分の実力ですし、もっと上を目指さなければなりません。

こだわるのは打点と得点圏打率


──今年の二軍成績を見ると、三振が減り、四球が増えていますが、何か変えたところがあるのですか。

石川 そうなんです。今年はフォアボールが多い(39試合で28個。昨季は107試合で18個)です。課題にしている低めのボール球の見極めが、うまいこといっているんですかね。

──それが三振の減少にもつながっている?

石川 ボール球を振って三振するケースが多かったので、今年は我慢できているのかもしれないです。調子の波を小さくすることも自分の課題なので、数字に現れているのはいいことだなと思います。

──打撃の調子のバロメーターはありますか。

石川 右方向に伸びのあるいい打球が飛べば、悪くないなと感じます。「ボール球に手を出さない」のもあります。いい状態は1年間を通して本当にわずかです。崩れるのは一瞬ですからね。いい状態をずっと維持するのは難しいので、落ちるときに、落ち幅を少なくしないといけない。毎日、ビビりながらやってます。

──ビビりながら?

石川 ビビりながらやってますよ。明日起きたらバッティングの感覚が狂ってるんじゃないかなと思うこともあります。だからこそ、納得いかない1日を送りたくない気持ちがあります。「何かもう少しやっておけば良かったな」と、寝るときに布団に入って思うような1日は絶対作りたくないんです。

──ちょっと気になったら、バットを振ったりもするのですか。

石川 布団に入ったときに気になるようでは野球選手としてダメだと思います。グラウンドと室内練習場でやるだけやって、自分で納得するまでやらないと。結局は自問自答なんです。自分としっかり話し合って、自分でこれでいいのかと、やりたいことはもうないのかと。1日の終わりではなく、グラウンドから引き揚げるときに考えるようにしています。そして、やり足りなかったら、ご飯を食べた後にまた練習することもあります。ここには素晴らしい設備が整っていますから。

──一軍で打率は.229ですが、得点圏打率が.391と高いです。

石川 すごく気にしているポイントなんです。去年から小田(智之)コーチと、得点圏打率と打点はすごく意識して取り組んでいたので、この数字はうれしいです。

──チャンスに強いのは大きな武器になりますね。

石川 まだ100打席も立っていない中で11打点は、自分が「できるんだ」と思えて自信になります。僕は小谷野(栄一)さんのような打者を目指しているんです。ホームランが少ないのに、一度打点王(10年/16本塁打、109打点)を取ったじゃないですか。

 いまでも状況に応じてバッティングを変えられるのは自分にない技術なのですごくうらやましいです。栄一さんとよく話をして、すごく勉強させてもらっています。

──いま一番課題として取り組んでいることは何ですか。

石川 モチベーションを変えないことです。一軍ではこうする、二軍ではこうする、ではなくて、一軍と二軍でやることを統一したいんです。それを強く意識しています。

同期の4人で一軍の試合に出る


──どんな場面でも同じようにプレーできるようにということですか。

石川 一軍から二軍に落ちると、すごく落ち込みます。そこをジタバタせずに変えないようにと強く思っています。

 金子誠さん、赤田将吾さん、武田久さんなど一軍で実績もあって、僕より年上の選手は、ファームを疎かにしない。練習にも真摯に取り組んでいます。

 僕が10日間だけ落ちたときは稲葉(篤紀)さんがいたのですが、一流と言われる選手はやはりすごかったです。僕自身、ファームに行くとき、まだ2割7分くらいは打っていましたし、投手との入れ替えというチーム事情とはいえショックでした。すごく悔しい思いをしました。でも、ベテランの方の姿を見たら、自分は実績もないのにたかが30試合出ただけ。それで元気をなくしていたら、「何様のつもりや?」と。

──人に言われたわけではない。

石川 はい、自分で思ったんですよ。何考えていたんだろうと。野球選手の前に人としてそういう部分を大事にしたいなと思います。そういう環境が日本ハムにはあるんです。若い選手がそうやっていけば、いずれ中堅、ベテランと呼ばれる歳になって自分のように感じてくれる若い選手がどんどん出てきて、良い循環が続けば、ずっといいチームでいられると思います。そういう部分を大事にしたいと思います。

──同期の高卒で近藤健介選手、上沢直之選手が一軍で活躍している姿は刺激になりますか。

石川 はい、同級生4人で一軍の試合に出ることが一つの目標でもあるんで。(松本)剛も絶対やれるので、自分も置いていかれないようにしっかり練習するだけです。

──「4人で一緒に」というのは入団したころに話していたのですか。

石川 はい、4人でご飯を食べているときに。4人ともポジションが違うじゃないですか。近藤もいまは内野手を経験してますけど、絶対キャッチャーとして出ることにこだわっているはずです。みんなで絶対出られると思っています。

5月20日の中日戦で本塁打を放ち、同期の近藤健介と喜びを分かち合う



──将来はどのような選手になりたいですか。

石川 日本ハムはファンを大切にする球団です。稲葉さんなどを見てもそうですし、新庄剛志さんとは一緒にプレーしてませんが、そういうことを大事にする選手だったと聞いています。ファンあってのプロ野球選手なので、ファンを大切にする気持ちを持ってやっていきたいです。

──陽岱鋼選手もキャンプのときにスタンドのファンと声を掛け合ってました。

石川 自分はまず、選手としてあのレベルまで行かないといけません。

PROFILE

いしかわ・しんご●1993年4月27日生まれ。大阪府出身。178cm77kg。右投右打。東大阪大柏原高から12年ドラフト3位で北海道日本ハムに入団。2年目の13年は二軍でチーム最多の14本塁打を放つなどの活躍で注目を浴びる。同年8月22日の楽天戦(Kスタ宮城)で一軍デビューを果たした。今季は4月には一軍に昇格し、外野手の定位置争いに参戦。今季成績は44試合出場、83打数19安打、1本塁打、打率.229(8月25日現在)
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各球団の将来を担う若手有望株へのインタビュー。現在の不安や将来への希望が語られます。

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