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吹けよ新風 プロスペクトたちの挑戦

中日・鈴木翔太インタビュー 新しい自分を見せるために

 

ドラフト1位、そして背番号18。入団時から大きな期待を背負った右腕はしかし、昨季まで才能を開花させることはできなかった。過去を振り切るために身に染み込ませた新フォームとともに、勝負のプロ4年目に臨む。
取材・構成=吉見淳司、写真=上野弘明、榎本郁也

中日鈴木翔太・投手・4年目


一流投手が認めたボール


「品のあるストレート」

 中日の黄金期を支え、今季から投手リーダーに指名された吉見一起は、その直球を独特な言葉で表現した。球速表示は速くても145キロ前後。だが、糸を引くような軌道は数字以上の魅力がある。しなやかな右腕の振りから投じられた白球があっという間に捕手のミットに吸い込まれ、打者はバットを動かすこともできない見逃しストライク。そんな場面を2月、3月にたびたび演じてきた。高卒4年目のシーズンを迎える鈴木翔太。その才能がいま、ついに開花寸前を迎えている。

「ストレートはしっかり指にはかかっている感覚はありますね。ただ、指のかかり自体はいいんですけど、まだまだシュート回転するボールもあるので、そこをなくしていけるようにやっています。いまはようやく、自分のボールを投げられているという感触があります。フォーム自体もだいぶ固まってきていますし、そのフォームで力まずに投げられれば、ちゃんとしたボールを投げられると思っています。この感覚は一昨年、去年はなかったですね。いつ以来かは分かりませんが、今までよりははるかにいい感じで来ています」

 新フォームの大きな変更点は2つある。1つ目はインステップ気味に踏み出していた左足を、捕手方向へと向けたこと。もう1つは投球の際、7歩半開いていた歩幅を6歩半に狭めたこと。野球人生を左右しかねないフォームの改造だったが、自らそれを選択したという。

「フォーム改良に取り組んだのは昨季の後半でした。変えることに迷いはありませんでしたね。自分でも悪い方向に行ってしまっていることは分かっていたので、変えないといけないと思っていました。ピッチングコーチの方と相談しながら形を作っていきました。今のフォームだとボールを上からたたきやすくなっているし、上体が前に突っ込まないということもあります。上体が前に突っ込むと、どうしても右腕が遅れてきて最終的にはボールが抜けてしまうので、そこだけはなくすように意識していました」

 入団1年目、2014年6月17日の西武戦[浜松]で早くも一軍デビュー。同年は先発こそなかったものの5試合に登板して経験を積んだ。だが、そこからは暗転。15年はウエスタン・リーグの開幕戦(3月20日、阪神戦、鳴尾浜)に先発するも、6回に左ヒザに打球を受けて亀裂骨折を負うアクシデント。16年も春季キャンプ後に左ワキ腹痛や右肩痛に悩まされ、初めて一軍登板ゼロに終わった。

「一昨年、昨年とケガが多く苦しい2年間でしたね。ケガをしてしまい、まったく野球ができなかった時期もあったので、正直、焦りもありましたし、どうしたらいいかも分からなくて、毎日、野球がつまらなかった。その中で、何がきっかけだったのかは自分でも分からないんですけど、フォームを変えようと決意したのが昨年のこと。そこから動画を撮って自分のピッチングフォームを見直して、歩幅が広いと気付き、そこを直していこうと思いました。それまでは考えれば考えるほど悪くなってしまうところがあったんです。考え過ぎて、自分のピッチングができなくなってしまっていたので、考え方をすごくシンプルにしました。まずはしっかり立つこと。しっかり立った後は、上から投げることを意識するようにしました」

 考え方を変えたことで、技術面にも大きな変化が表れた。さらに技術の変化は精神面にも好影響をもたらす好循環。2年間の暗闇を払しょくする力を着々と蓄えている。

「これまではコントロールを気にして腕が振れなくなってしまうこともあったのですが・・・

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