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ヤクルト・山田哲人インタビュー 今、話を聞きたい人

 




両リーグ合わせてトップの得点を挙げているヤクルト打線。そのリードオフマンを務めるのが、4年目の山田哲人だ。昨季途中からセカンドのポジションを奪うと、今季は開幕から一度もスタメンを外れることなく好調打線を引っ張っている。2011年のドライチが、ついに開花のときを迎えた。
取材・構成=阿部ちはる、菊池仁志、写真=保高幸子、BBM
※本記事は2014年5月に行われたインタビューになります。

体幹トレーニングと意識の変化


――昨季途中からスタメンでの起用が増え、今季は開幕から一番・セカンドで出場を続けています。

山田 ずっと出ていますけど、監督や城石(憲之)コーチからは『お前はレギュラーになった気でいるなよ』ということを常に言われています。田中(浩康)さんの存在もありますから、一日一日が勝負ですし、必死です。

―― 一番打者としての仕事というのはいつも意識しているのでしょうか?

山田 そんなに意識はしていないです。もう必死ですから。とにかくヒットです。ただ、僕の一番バッターの理想としては初回に出て、最初にホームインすることなので、毎試合毎試合、初回の一打席目は、何が何でも出ようという気持ちを持っています。

――打席に入る際にチームの作戦として、何か指示を受けることは。

山田 作戦というのは特にないです。でも個人的に杉村バッティングコーチと毎日、ティーバッティングの中でバット軌道を確かめています。僕はバットが下から出るクセがあるので、杉村さんに軌道を確認してもらって、上からたたくように指導をしてもらいます。そうすることで実際の試合ではレベルスイングになるんです。それをアップ前にいつもしています。

――具体的にどのような練習をしているのでしょうか。

山田 横から投げてもらったり、低めと高め、長い距離を投げてもらってのティーとか。イスに座って打ったりもしますよ。

――それが打撃好調の要因になっている。

山田 あとは体幹ですね。体幹のトレーニングをオフから取り入れるようになりました。それが飛距離にもつながっています。守備でも踏ん張りがきくようになりましたし、体幹を使って投げることができています。

――意識するきっかけがあった。

山田 昨年の秋季キャンプでのトレーニング中、みんなは普通にこなしているのに、僕だけ全然こなせていなかったんです。そのときにトレーニングコーチから『体幹を鍛えたらちょっとは変わるよ』とアドバイスをいただきました。

――今年は本塁打の数も増えています(13年3本、14年7本)。4月16日の巨人戦(神宮)では、プロでは自身初となる右方向への本塁打も打ちました。

山田 もともと引っ張るだけのタイプだったのですが、昨年から少しずつ右方向への意識を持ち始めました。ヒットの確率を上げるために90度全部使うことも心がけています。最初は全然強い打球が行かなかったんですけど、今年は体重も増やしましたし、当てるだけではなく、振り切ることを意識して練習していくうちに、だんだん力強い打球がライト方向に行くようになりましたね。

4月16日の巨人戦で放った右方向への本塁打は、意識の変化がもたらした一発だった



――それが今のホームランの数にもつながっている。

山田 うまく角度が付いたら入る、といった感じです。

――出塁率は4割をマークしています。

山田 出塁率への意識はありますよ。四球を選んででも出たいです。粘り強いバッターを目指しているので、簡単には終わりたくないですね。いやらしいバッターになりたいです。

――二塁打18はリーグトップです。

山田 バッティングカウントでは、思い切り振っていくことが多いです。あとは、全力で走る(笑)。

――足に自信は?

山田 (自信は)結構あるので、盗塁もしようとしているんですけど、やっぱりなかなかスタートが切れなくて(苦笑)。その分、二塁打が打てればと。

――チームは下位打線も好調で、チャンスで打席が回ってくることも多いです。得点圏に走者がいる場面で何か意識されていることはありますか。

山田 いや、あまり考えないようにしています。去年は得点圏打率が低かったので、やっぱり、どこかで意識していたのかなと。なので今年はランナーがいないものだと思って、自分のバッティングをすることを心がけています。

――打てないときには守備にも影響が出てしまっていたそうですね。

山田 はい。去年は打撃でうまくいかないとシュンとしちゃっていました。切り替えができていなくて守備にも影響していましたね。『打てない日は守れ』ということはずっと言われているのに、どっちもミスしてしまって……。でも今年は開幕から切り替えがうまくできるようになりました。

新たなポジション・セカンド守備の難しさ


――今ではすっかりセカンドとしてのイメージがありますが、高校時代やプロ2年目まではショートでした。監督やコーチからはどういった指導をされたのでしょうか。

山田 一から十まで全部です。全然動きが分からなかったので、まず基本から教えてもらって、一つひとつやっていきました。

――ポジションが変わったことによる変化や難しさはありますか。

山田 逆の動きが多いですし、ショートからの見え方とセカンドからの見え方は全然違うので、そういった難しさはありますね。最初は居心地が悪かったんです。でも最近はベストだと感じています。ショートから見る景色よりセカンドから見る景色の方が今は好きです。

――どういったところに魅力を感じているのでしょう。

山田 今まで僕はショートが一番かっこいいと思っていました。だけど実際にやってみるとピポットとか、セカンドベース上の動きとか、セカンドにはセカンドの難しさがありますし、考えながらプレーしなければいけません。

――そういった難しさも魅力のひとつなんですね。今は自信を持って守備に就けているのでしょうか。

山田 今も全然できていませんが、少しずつ成長しているなというのは感じています。二遊間のさばきとかもまだまだですし、ゲッツーのときの送球が安定していないので、安心して見てもらえるような選手になりたいですね。

基本から教わったという二塁守備だが、少しずつ成長を感じられているという



――打撃の面では今後、どのような選手になっていきたいですか。

山田 相手から嫌がられる存在になりたいです。それだけですね。『あいつイヤやな』って。そう思わせたらそれだけで勝ちですから。

――目標とする選手は。

山田 坂本さん(勇人=巨人)は今はポジションが違いますけど、打撃スタイルなどは高校のときからあこがれていました。長打も打てて、時には単打で決めることもできる。足も速いし、盗塁もするし。そういう選手になりたいです。

――シーズンもそろそろ中盤戦にさしかかっていますが、最後に今年の目標を聞かせてください。

山田 数字としては、3割30盗塁……2ケタ本塁打ですね。

――2ケタ本塁打は達成できそうなペースです。

山田 でもホームランは狙っていないんですよ。場面にもよりますけど、ホームランを打つタイプじゃないので。

――ここまでのホームランも狙って打ったものではない。

山田 そうですね。特に意識はしていなかったと思います。

――現在チームは5位にいます。雰囲気はどうですか。

山田 チームでは、『目の前の戦いをしっかりひとつずつ勝っていこう。その積み重ねが優勝につながるんだ』という話をしていますし、雰囲気もいいです。なので1試合1試合、目の前の勝負に集中して戦っていきます。まだ90試合も残っているので。『1試合1試合、勝つ!』それだけですね。


PROFILE
やまだ・てつと●1992年7月16日生まれ。兵庫県出身。右投右打。180cm76kg。履正社高から11年ドラフト1位でヤクルト入団。ルーキーイヤーにクライマックスシリーズでデビューし、プロ初安打(公式戦ではないため記録は残らず)を放ち話題を集めた。13年の5月後半に一軍昇格を果たすと徐々に出場を増やし、田中浩康からレギュラーを奪った。今季は開幕からスタメンで出場を続けている。今シーズンの成績は53試合、打率.329、7本塁打36打点5盗塁(6月1日時点)。
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週刊ベースボール編集部が注目する選手にフォーカスするインタビュー企画。

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