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7月13日時点でチーム防御率4.84と苦しむロッテ投手陣の中で、開幕から安定して勝利に貢献しているのが、西野勇士だ。育成から支配下登録となって2年目ながら、その安定感は抜群。しかし自身は、現在の活躍を「想像できていなかった」と言う。
取材・構成=吉見淳司 写真=桜井ひとし、BBM

体力は問題なし!

─今季はすでに30試合以上に登板していますが、体調面に変化はありますか。

西野 調整法にもだいぶ慣れてきているので、まったく大丈夫です。

─毎試合スタンバイが必要になり、体力的にも精神的にもタフではないと務まらない役割です。

西野 でも、中継ぎの人と比べると出る場面がだいたい決まっているので、そんなに苦しいわけではないですよ。勝っている場面で行くので、「逆転されちゃいけないな」というプレッシャーはありますけど。

─昨年のCSでは中継ぎで活躍しましたが、その経験が生きているのでしょうか。

西野 中継ぎで投げる機会は少なかったので、だいたいこういう感じなんやろうなという雰囲気はつかめたような気がします。疲労で言えば、昨シーズンの方がありました。一軍にいるのが初めてだったので、シーズンの流れが分からなかったし、すごく疲れていた感じでした。今年はあまり「疲れているな」という感覚はないですね。

─試合だけに集中できる。

西野 ずっと一軍にいたわけではないですけど、移動だったり、いろいろな経験を積めたので。だいぶ慣れましたね。

─調整法はチームメートを参考にしたのでしょうか。

西野 いや、特にはないですね。自分なりに試行錯誤をしながらです。みんながみんな同じ調整法ではないと思いますし、結局はマウンドで一番良いパフォーマンスをできる状態に持って行くのが大切なことですよね。僕は自分で自分のリズムというか、調整の仕方をいろいろ試しながら身に着けていこうかなと。

─ちなみに、現在の登板までの過ごし方は。

西野 試合開始後はマッサージをやる人も多いんですけど、僕はストレッチくらいで軽めにほぐしてもらって、だいたい5回くらいにブルペンに行きます。しばらく試合を見て、合間合間に動きながら、7回くらいから汗をかく程度に体を動かして、8回に味方の投手がマウンドに行ったらキャッチボールをし始めます。相手チームの守りのときに投球して、そのままマウンドに。

─いつごろから固まってきましたか。

西野 そこは最初からあまり変わっていないですね。座りっぱなしだと体が変な感じになっちゃうんで、動きながら出番を待ちます。

▲7月1日のソフトバンク戦(東京ドーム)では1対0の9回裏から登板し、今季16セーブをマーク。プレッシャーを跳ね除けた(写真=高塩 隆)



クローザーの難しさ

─昨年に先発をやっているからこそ、抑えの難しさも分かるのでは。

西野 8回で急に味方が逆転することもありますからね。難しいですけど、点差が近いときはいつでも行けるぞという気持ちでいるようにしています。でも、特にシーソーゲームのような取って取られてという試合はどう気持ちを入れていいか分からないですね。僕が初めて失敗したとき(5月4日対西武、QVCマリン)もシーソーゲームで、8回に2点を勝ち越しして「行くぞ」となって打たれてしまったんですよ。「あ、行くの?行かないの?」というところが……。

─出番は予測できませんからね。

西野 僕、すぐにパッと行けないんですよね。気持ち的に。「よし、行くぞ!」と気合が入るときと入らないときがあるんです。気持ちが入らなくても抑えられることもあるんですけど、あまりいいことではないと思うので。気持ちも乗って抑えられるのが最高ですよね。

─ここまでの自身の成績についてはどう思いますか。

西野 抑えとしてはまだまだだなとは思いますけど、まだ失敗が2つで、そのうちの1つは逆転されなかったですし、それはいいんじゃないかと思います。

─失敗した場面が少ない。

西野 やっぱり先発投手からすると、勝ちが消えてしまうのは嫌なので。点差が開いているときに抑えが点を取られても、そのまま勝ちで終わればいいんですけど、同点にされてしまうのは良くないですよね。

─僅差では普段よりも力が入る。

西野 でも、余計に難しいんですよね。ランナーが出た瞬間、相手チームの士気が急に上がって、「行けるぞ!」というムードに変わるのを肌で感じるんです。集中力がすごく上がるような気がします。

─そんな中、三振を奪えるフォークが大きな武器となっています。

西野 僕の生命線と言ってもいいボールだと思っています。真っすぐだと、ほかの抑え投手と比べたら全然速くないと思うので。ほかの投手はだいたい150キロを超える人が多いじゃないですか。

─西野投手も今季は150キロを出しましたよね。

西野 出たんですけどね(苦笑)。あまり実感はないです。球速は欲しいですけど、そこまで求めているわけではないので。フォークと真っすぐのコンビネーションで何とか抑えている感じです。

─しかし、直球で見逃しを奪う場面も多いです。

西野 フォークはある程度警戒されていると思うので、その裏を突いていく必要もあるかなと。フォークに対する打者の反応を見ながら、特に僕が有利なノーボールや1ボール、2ストライクだと「フォークあるぞ」と警戒するので。そこはうまくボールを選択できているかなと思います。

─そのあたりも含め、昨年よりも余裕を持っているように感じます。

西野 いや?……でも、今のところ点差が空いた状態での登板が多いので気持ち的には楽ですけど、接戦が増えてくるとどうなるかは僕も分からないですね。いつも2、3点差。4点差ということもありますけど、特に1点差だとすごく緊張するので。

─三振奪取率が高く、抑えに適性があるのでは。

西野 う?ん……分からないです(苦笑)。本当に任されたところをやるぞという気持ちです。短いイニングの方が計算せずに思い切っていけるんですけど、一つのボールが響いたりしてしまうので、短い分しっかり投げないと。思い切って投げるだけじゃいけないですから。

先発? 抑え?

─理想のクローザー像は。

西野 上原さん(浩治、レッドソックス)ですね。すごく速い真っすぐがあるわけではないですが、スプリットとのコンビネーションをうまく生かしている。僕が見えない技術的な引き出しも多く持っているとは思うんですけど、僕もああいうピッチングがしたいですね。

─今、課題としていることはありますか。

西野 さっきも言ったように、ランナーが一人でも出ると相手の士気がとても上がってしまうので、ムダなフォアボールだけは出さないようにと最近は意識しています。ヒットを打たれるのは仕方ないとして、フォアボールだけは点に絡む可能性が本当に高いので。あまり慎重になり過ぎるのも良くないので、考えずにマウンドに立ちたいんですけど、とりあえず出さないようにしたいですね。

─この活躍でメディアの注目も増しているのでは。

西野 いえ、実は抑えになってからは取材はあまりなくて、去年の方が多かったです。クローザーは抑えて当たり前ですからね。抑えていても全然来ないけど、失敗したときにはめっちゃ来るじゃないですか。なんなんやろ、と思います(苦笑)。

─よほどのことがないと記事になることも少ないですからね。

西野 今年、開幕から14試合連続無失点していたときは結構ありましたけど、打たれた瞬間にはもっとバーッて来ましたもん(笑)。一瞬ですよ。仕方ないですけど。

▲開幕から5月3日の西武戦(QVCマリン)まで14試合連続無失点。救援として上々のスタートを切った(写真=高塩 隆)



─現在、チームは先発投手陣のやり繰りで苦心していますが、もし、再び先発を打診されたら。

西野 違和感なく戻れるということはないと思うんですけど、それなりに調整していけば普通にできるかと。どうですかね……言われたらやるしかないですけど。

─できれば、1年間同じ役割の方が良い。

西野 でも、本当に苦しい状態なら。頼りにされるほどの先発ではなかったですけど、やれと言われればもちろんやります。

─すっかりチームに欠かせない存在となりましたが、2年前は育成選手として背番号131でした。当時からすると素晴らしい活躍と言えるのでは。

西野 今の姿はまったく想像できていなかったですね。先発でマウンドに立ちたいとは思っていて、昨年にローテをしばらく守ることができました。ましてや今季、守護神になるとはまったく予想していなかったですね。もともと真っすぐが速い方ではなかったので。ここ数年で急に150キロが出るまでになったんですけど、先発よりも特に今が不思議ですね。まさかこうなっているとは。

─先発、抑えへの適性を見せて、これからの可能性が楽しみですね。

西野 常に上は求めていきたいですね。まだまだ経験の浅い投手なので、ファンの方にはハラハラさせてしまったり、失敗することもあるかもしれないですが、温かく見守ってくれればうれしいです。

PROFILE

にしの・ゆうじ●1991年3月6日生まれ。富山県出身。右投右打。182cm 82kg。新湊高から2009年育成ドラフト5位でロッテ入団。4年間は育成も、12年オフに支配下登録に。13年は先発ローテーション入りを果たし、チームトップタイの9勝を挙げた。今季はクローザーを任されている。14年成績は35試合登板0勝1敗5H18S、防御率2.00(7月13日現在)。
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