週刊ベースボールONLINE


西武先発陣の柱になれるか?新外国人ウェイド・ルブランの実力は?

 

昨年は5年ぶりのBクラスとなった西武。優勝を狙うためには助っ人の活躍も必要だ



良い状態で日本球界へ


 西武は2015年の新外国人選手としてウェイド・ルブラン投手と契約をしました。今回はルブラン投手についてお伝えしたいと思います。

 ルブラン投手は現在30歳の左腕で、2006年のドラフト2巡目全体61番目という高い評価でサンディエゴ・パドレスに入団をし、その後、フロリダ・マーリンズ、ヒューストン・アストロズ、ニューヨーク・ヤンキース、ロサンゼルス・エンゼルスの4球団を渡り歩いています。

 2008年以降、3AとMLBを行き来している中、2010年にはサンディエゴ・パドレスで防御率4.25/8勝12敗/WHIP1.42という成績を残しています。メジャー通算では防御率4.47/21勝33敗/WHIP1.42、3A通算では防御率4.45/42勝30敗/WHIP1.28となっています。

 メジャーでは先発ローテーションの5人のうち、5番手クラスもしくはバックアップの1番手となる投手で、2011年までは先発専門だったのですが、2012年以降は先発とリリーフを兼任しフル回転をしていました。2014年は3Aでは、22試合128回で防御率4.43/10勝4敗/奪三振119/WHIP1.45/被打率.288/奪三振率8.37ですが、メジャーではニューヨーク・ヤンキースとロサンゼルス・エンゼルスの2チーム合計で、防御率3.94/1勝1敗/WHIP1.15/被打率.245とまずまずの成績を残しています。

 特にロサンゼルス・エンゼルスに移籍後は、28.2回で防御率3.45/WHIP1.08と向上し、9月だけでは19.0イニングで防御率0.47/WHIP0.68と好調で、良い状態でシーズンを終えることができているので、2015年に向けて好材料となるのではないでしょうか。

奪三振率に注目したい


 奪三振率はメジャーでは通算で6.09と目立つほどの高さではありませんが、日本の各球団が外国人選手を獲得する際に重視すると言われている3Aの成績では、奪三振率8.25を記録しています。2014年も通算成績と似たような数字で、メジャーでは奪三振率6.37、3Aでは8.37となっていますので、私は今シーズンの彼の奪三振数に注目をしたいです。

 また、与四球の割合は、2014年には3Aではでは9イニングあたりで2.95個、メジャーでは2.12個で、特にエンゼルス移籍後は1.88個と向上しています。彼のキャリア全体でも与四球率はメジャーで9イニングあたり3.20個、3Aで2.48個となりますので、制球面で大きな心配はないと考えられる投手だと思います。

成功のカギはチェンジアップ


 ルブラン投手の持ち球は、フォーシーム、シンカー、チェンジアップ、カットボール、スライダー、カーブの6つとなり、アメリカの投手にしては非常に多彩な投手と言えます。球速に関しては、フォーシームとシンカーがともに最速が91マイル(146キロ)、平均で89マイル(143キロ)と決して速い方ではありません。ルブランの投球に占める球種の割合は、キャリア全体ではフォーシームが36.1%、チェンジアップが24.0%、カットボールが18.5%、シンカーが12.5%で、カーブは7%、スライダーは1.4%にとどまります。

 2014年に関してはフォーシームが24.6%に減る一方で、カーブが14.6%に増えています。このカーブが効果を発揮したようで、被打率は.125と低く、シーズン終盤の好成績につながったと考えられます。現在の彼の球種の中で最も信頼をおいている球種はチェンジアップで、打者がスイングしても41.9%が空振りになり、被打率も.194と低くなっています。

 チェンジアップは打者の手元でブレーキがかかり、沈む動きも加わるため空振りを奪うのに効果を発揮しているようで、たとえフェアゾーンに飛んでも44.98%がゴロになるなど、長打をあびにくい球種で、このチェンジアップが日本で通用すると彼は日本で良い成績が残せると思います。

 カーブは曲がりは大きくないものの、タイミングを外すのに効果があるようです。このチェンジアップ、カーブをうまく投げ分ける捕手のリードも重要になるのではないかと思います。彼は技巧派タイプの投手で、フォーシームとほぼ同じ球速のシンカーやカットボールを使いながらボールをコーナーに動かして、チェンジアップやカーブでタイミングを外すという投球のようです。

 マイナーの選手はメジャーに比較して、変化球に弱い選手が多いため、この多彩な投球が3Aでの奪三振率の高さにつながっているのだと思います。投球フォームもオーソドックスで、球速は速くないものの、制球面でも安定感があり、昨年の日米野球で来日していたクリス・カプアーノと似たような印象です。

 西武の先発投手陣は、現状では左投手が菊池雄星投手だけですので、彼が先発ローテーションに加われば左腕が2人になりますので、今年の西武の先発陣の柱になる事を期待したいです。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング