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巨人の新外人フランシスコは日本でアジャストする事が出来るか?

 

フランシスコは得点力不足に悩む巨人を救えるか(写真=BBM)



 開幕から27試合で1試合平均3.2点(4月29日時点)と得点力不足に悩む巨人。外国人打者のセペダが不振、そこで打線のテコ入れとして新外国人のファン・フランシスコ選手と契約を発表しました。今回はこのフランシスコ選手についてお伝えしたいと思います。

 フランシスコ選手は188センチ、111キロ。タンパベイ・レイズからフリーエージェントとなった右投左打ちの内野手で、ポジションは一塁と三塁を主に守ってきたドミニカ共和国出身の27歳です。

メジャー48本のパワーヒッター


 2014年はトロント・ブルージェイズに所属していたのですが、11月、チームによってウェーバーにかけられたところを、レッドソックスが獲得しました。そのレッドソックスはフランシスコ獲得後に、同じ三塁を守るパブロ・サンドバルと大型契約を結んだため、契約更新期限までに契約を提示せず、フランシスコは自由契約となりフリーエージェントになりました。そのフリーエージェントとなった後に、タンパベイ・レイズとマイナー契約で合意してスプリング・トレーニングに参加しました。

 このマイナー契約には開幕時にメジャー昇格できなかった場合には、契約を破棄できる権利が含まれていたそうです。フランシスコはスプリング・トレーニングの18試合で40打数で2本の本塁打を打ったものの、18個の三振を喫し、打率.150/出塁率.227と低迷したため、開幕時のメジャー25人枠から外れてしまいました。その決定を受けて、フランシスコは契約破棄を選択して、再びフリーエージェントとなっている状態です。

 マイナーリーグの2Aでは109試合437打数で打率.281/本塁打22/打点74/出塁率.317/長打率.501/OPS.818、3A通算では185試合744打数で、打率.306/本塁打40/打点139/出塁率.342/長打率.559/OPS.901となっています。

 マイナーリーグ3Aの成績は162試合換算では本塁打は年間35本塁打・121打点となる素晴らしい数字で、OPSも.900を超えていますので、マイナーレベルでは頭1つ抜けたバッターでした。

 彼のパワーはメジャーでも発揮されていて、2013年は124試合348打数で打率.227/本塁打18/打点48/出塁率.296/長打率.422、2014年は106試合287打数で打率.220/本塁打16/打点43/出塁率.291/長打率.456という成績を残しています。

 日本人メジャーリーガーで年間15本塁打以上を記録しているのは松井秀喜(31本)、城島健司(18本)、井口資仁(18本)、イチロー(15本)の4人しかいません。そのことを考えれば、パワーに関しては優れたものがあることがわかります。

 各メジャーリーグのチームも彼の長打力に関してはメジャーの各球団から一定の評価をしていると思います。では、なぜリリースをされてしまったのでしょうか?パワーがある一方でバットコントロールに難があるため大振りが目立ち、守備にも難があるためです。

課題は変化球の見極め


 打撃で目立つのが彼の三振率です。2013年に35.8%、2014年に36.3%、メジャー通算では34.4%と非常に高い割合で三振しています。ほぼ3打席に1回は三振するという計算になります。日本の皆さんにも分かりやすい様にお伝えをすると、2014年シーズンのセ・リーグで三振率が一番高かったのが広島エルドレッドで37.2%、それに続くのがゴメスの30.9%、堂林翔太の30.6%、キラの29.5%でした。これらの数字と比較をした時に、フランシスコはかなり三振が多いタイプの打者であることがわかるのではないでしょうか。

 さらに今年の春のオープン戦では三振率が40.9%に達していましたので、メジャー契約に至らなかったのだと思います。新外国人を獲得する際に、日本の各球団が重要視する3Aの成績でも三振が多いには多いのですが、2014年が三振率18.0%で、3A通算でも22.6%とメジャーの時よりは改善されます。また、四球を選ぶことができる忍耐力と選球眼についてですが、四球率がメジャーでは2013年に8.3%、2014年に8.4%、3Aでは2014年に12.0%となっています。

 マイナーだけの数字であれば、そこそこの選球眼があることになるのですが、メジャーの数字であれば選球眼が良いとは言えないことになります。

 では、なぜマイナーとメジャーで極端に違いが出るのか? ということになるのですが、投手のレベルや質が違うのはもちろんなのですが、フランシスコがファーストボールには強い一方で、カーブやスライダーなどのブレーキングボールに極端に弱いことが原因ではないでしょうか。

 ファーストボールはストライクゾーンの72%をスイングするのに対して、ボールゾーンは29%しかスイングしないのですが、ブレーキングボールとなるとストライクゾーンの52%しかスイングせず、逆にボールゾーンを38%もスイングしてしまっています。マイナーでは力勝負が多く、変化球の球種が少ないためメジャーに上がれない投手が多いので、フランシスコが圧倒するものの、メジャーでは変化球の良い投手が一気に増えるため、三振が飛躍的に増え、四球が少なくなるのだと思います。

 さらにコンタクト技術に非常に難があり、2014年のメジャーリーグでのデータでは、ファーストボールはスイングの30%が空振り、ブレーキングボール(カーブ・スライダー)は49%が空振り、チェンジアップが28%と空振りとどれも高い数字です。ファーストボールには選球眼があるものの、変化球の選球眼に難があることがわかります。

 また左打ちのフランシスコですが左投手に弱い数字が残っています。右投手には打率.238/出塁率.306/長打率.504とOPSが.800を超えるのですが、左投手には打率.116/出塁率.204/長打率.186と目も当てられない数字となりますので、対右投手をメインにして起用したほうが無難と言えそうです。(巨人ではどのような使われ方をするのか注目しております)

 守備面ではセイバーメトリクスのデータから、一塁の守備はメジャー平均をやや下回る程度ですが、三塁に関しては平均以下という数字で、守備率も通算で.934と高くありませんので、あまり期待は出来ません。彼の肩は非常に良いのですが、グラブさばきが全般的に雑な印象があります。

 日本の野球を柔軟に学ぶことができれば、パワーが図抜けているため、結果を大きく残す可能性があるものの、アジャストできなければ三振の山を築きそうな感じがしますが、どのように日本の投手に対応していくのか注目したいです。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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