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DeNA新外国人投手はチームをプレーオフに導けるか?

 

今季はメッツとマイナー契約を結んでいたビロウ。(Getty Images)



制球が良く、使い勝手の良い投手


 クライマックスシリーズ進出だけでなく、リーグ優勝を狙える位置につけている横浜DeNAベイスターズが第5の外国人デュアン・ビロウ投手(29)の入団を7月3日に発表しました。

 今季開幕から既に一軍の外国人4人枠にはロペス、バルディリス、エレラ、モシコーソがいますが、左腕投手不足だったということもあり、ニューヨーク・メッツ傘下の3Aラスベガスでプレーするビロウ投手の獲得になりました。

 今回は、そのビロウ投手についてお伝えしたいと思います。

 左投左打の投手で現在29歳のビロウは2006年ドラフト19巡目全体562番目にタイガースに指名されてプロ入りし、2011年7月20日にメジャーデビューを果たしています。その後2013年4月にマイアミ・マーリンズに移籍したものの8月には自由契約となり、2013年12月に再度デトロイト・タイガースと契約を結びます。

 しかし、1年後には再びタイガースからリリースされて、2015年1月にメッツと契約を結び、今シーズンを迎えていました。2Aと3Aでは先発投手としてのキャリアを積んでいましたが、メジャー43試合では3試合だけの登板にとどまり、ロングリリーフなどをこなしていました。

 2A通算では30試合137.1回で防御率4.65/8勝12敗/WHIP1.36、3A通算では72試合(先発65)398.0回で防御率3.14/28勝21敗/WHIP1.28となっています。

 投手のタイプとしては奪三振が多い方ではなく、打たせてアウトを取るタイプ(ゴロアウト)の投手です。奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)は2Aで7.21、3Aで5.61、MLBでは5.19となっています。制球面では2012年に与四球が多くなりましたが、それ以外のシーズンでは比較的安定していて、与四球率(9イニングあたりの与四球数)は2Aと3Aともに2.8個、MLBでは2.4個となるなど、制球面に大きな不安があるタイプではないようです。

 被安打に関しては、被安打率(9イニングあたりの与四球数)が2Aで9.4本、3Aで8.7本、MLBで9.6本となるなど、それなりに打たれるほうなのですが、与四球が少ない分、大量失点につながりにくいことが比較的安定した防御率につながっていると言えそうです。先発とロングリリーフの両方をこなせることとは使い勝手の良さにつながりますし、2015年は先発とリリーフの両方をこなしながら11試合49.1イニングを投げて防御率2.19/WHIP1.10と安定した投球を見せていますので、その点でも期待出来るのではないでしょうか?

 3Aでは防御率2点台のシーズンも何回かあるなど、3Aでは安定した投球ができるものの、メジャーでとなるとやや力量不足なところがあり、特に今年のメッツはそれなりに投手の頭数が揃っているため、なかなかメジャー昇格しにくい状況にありました。

典型的な打たせて取るタイプの投手


 持ち球はフォーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップの4つとなっています。

 フォーシームが投球における割合が一番高く55.3%を占めていて、最速は151.7キロ、平均では146.1キロというデータが残っています。それに続いて多く投げられているのがスライダーで投球の19.4%を占め、最速145.7キロ、平均で137.4キロとなっています。このフォーシームとスライダーが三振を奪う際の決め球となっていて、奪三振に占める割合はフォーシームが53.3%、スライダーが31.1%となっています。

 基本的にはこの2つの球種が軸となり、そこにチェンジアップと縦のカーブを織り交ぜるという投球スタイルではないでしょうか?球種別の被打率を見ると変化球に関してはメジャーでもある程度通用したようですが、投球の半分以上となるフォーシームが打ち込まれてしまう点が、メジャーに定着できなかった原因の1つと言えそうです。日本でフォーシーム以外で打ち取る事が出来ればおのずと勝利数も増えてくるのではないでしょうか。

 彼のフォーシームはフライになる傾向が高いため長打につながりやすく、フォーシームの被長打率が.500となっていることも、メジャーで苦しめられたのではないでしょうか。

 彼は長いイニングを投げると全体的に球速が落ちるので、打順が2回り目、3回り目には注意が必要です。変化球はあまり曲がりが大きいものがなく、変化球は82-88マイル(131-141キロ)とフォーシームとの緩急もないため、打者がタイミングを取りやすくなるのではないでしょうか。

 また彼が入団をした、狭い横浜スタジアムもマイナス面になるのではないかと思います。

 彼のフォームはゆったりとしているので、日本の柔らかいマウンドではさらに落ちる可能性があり、より技巧的な投球が必要になると思います。日本のマウンドの柔らかさは特に我々スカウトも気にする点です。このビロウ投手がフル回転をする活躍をし、チームがプレーオフに進めるか?注目したいです。
著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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