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中村晃、銀次らの「デビュー戦」を振り返る

 

開幕戦は一軍スタートとなった新人選手たちにとって、プロ野球でのデビューのチャンスが訪れる日である。しかし、新人選手諸君はこの日の成績に一喜一憂することはない。長嶋茂雄は4打数4三振であったし、王貞治は27打席目でやっと初安打。一方、昨年の開幕戦に初打席で第1球を本塁打と最高のスタートを切ったヤクルト西浦直亨は、それが唯一の本塁打であった。今回は前号に続いて「プロデビュー戦」回顧録の打者編をお届けしたい。

開幕戦で鮮烈な活躍を見せたルーキーたち


 西浦直亨の開幕戦本塁打は新人選手ではプロ野球史上13人目。第1球を打ったのは史上初であった。それが終わってみれば14試合で32打数5安打の.156であり、長打は二塁打、本塁打が各1本だ。華々しいスタートは各球団からの厳しいマークを招くことになり、開幕5試合目の4月4日の阪神戦は出番なし。その後も出たり出なかったりで、4月24日の広島戦にスタメンで出ながら右邪飛、遊ゴロに終わって交代を命じられると、再び一軍の試合に出ることはなかった。

 その一方でこの試合で一番を打った山田哲人は4打数4安打の大活躍であり、同日現在の打率は.224で2本塁打の雄平は5月に入ると8本塁打と調子を上げていた。西浦の例に限らず、新人選手の開幕戦での大当たりだけでその後の未来を判断してはならない。

昨年の開幕戦で史上初となる新人初打席初球ホームランを放ったヤクルトの西浦直亨。その後は二軍落ちして苦しんだだけに背番号3の巻き返しが待たれる



 開幕戦に本塁打を打った新人選手で、通算200号を打ったのは1人だけ。過去12人の通算本塁打を紹介すると以下のとおりである。

▽38年春 村瀬一三 (名古屋): 7本
▽50年 戸倉勝城 (毎日):75本
▽55年 枝村勉 (大映):16本
▽56年 穴吹義雄 (南海):89本
▽58年 森徹 (中日):189本
▽58年 森永勝治 (広島):81本
▽60年 黒木基康 (大洋):63本
▽78年 山倉和博 (巨人):113本
▽81年 石毛宏典 (西武):236本
▽87年 真喜志康永 (近鉄):14本
▽89年 中島輝士 (日本ハム):52本
▽97年 清水将海 (ロッテ):89本
▽14年 西浦直亨 (ヤクルト):?

 12人のうち100号以上打ったのは3人で、本塁打王になったのは58年に中日入りした森徹が2年目にキングになった1例だけ。新人の開幕戦本塁打は決して大喜びするものではないのである。

 初打席本塁打は最高のスタートだが、初打席本塁打を含む3安打してプロ野球にデビューしたのは13年5月12日のロッテの加藤翔平だ。

 この日の楽天戦に左太ももを痛めた角中勝也に代わって昇格した加藤は、3回の初打席に初球を振り抜いて右翼席に第1号。加藤は「自分でも驚いた。角中さんの代わりと思わず、新人らしく全力プレーで盛り上げたい」と、初々しい笑顔で喜んでいた。初打席本塁打はパ・リーグ26人目。加藤はさらに2安打を続け、デビュー戦で4打数3安打の1打点。しかし、この年は続く22試合に22打数1安打で尻すぼみに終わった。

 1年後に加藤はまた大当たりした・・・

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