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大谷翔平が前半戦で見せた驚異の進化

 

日本ハム大谷翔平は今年はバッターの方ではやや精彩を欠いているが、ピッチャーとしては“投手三冠王”も夢ではない。前半戦を終えた時点で防御率、勝利数、三振奪取のすべてでトップなのである。この3部門のすべてで1位を占めた投手は日本のプロ野球史上のべ19人いるが、2度達成したのは稲尾和久(西鉄)しかいない(58、61年)。前半戦で両リーグを通じてただ一人だけ10勝を挙げ、防御率は1.43、117奪三振もダントツの1位で折り返した大谷は果たしてプロ野球史上20人目の投手の三冠王になれるのか。後半戦もこの驚異の21歳の活躍から目が離せない。(記録は前半戦終了時現在)

高卒3年目にしてチームのエースとして君臨する大谷翔平。末恐ろしいまでの成長スピードで勝利を積み重ねている



前半戦だけで10勝
どこまで成績を伸ばせるか


 今年3月27日の楽天戦(札幌ドーム)にプロ3年目で初めて開幕戦に先発した大谷翔平。その初戦で5回2/3を投げて1失点の好スタートを切ると、前半戦は10勝1敗。唯一の黒星も6月6日の阪神戦(甲子園)で7回まで1失点と好投しながら、打線が無得点に封じられたためである。その後も3連勝で、7月10日に両リーグを通じて10勝一番乗りをした。

 新人の13年には3勝0敗、2年目の昨年は11勝4敗だったが、今年は全日程の半分強を終えたところで10勝1敗。しかも防御率は昨年までの2年間の通算が3.07だったのに今年は1.43で第1位と、3年目での目覚ましい成長である。

 今年は先発した13試合のうち10試合は6イニング以上を投げ、自責点は2以下である。つまりクオリティースタートの条件を満たしている。満たさなかったのは以下の試合だ。

(1)開幕戦(5回2/3で自責点1)
(2)4月26日のオリックス戦(5回で自責点0)
(3)5月22日のソフトバンク戦(6回2/3で自責点5)

の3試合。

(3)は6回まで1安打、無失点で来ながら、7回に5安打、2四球で急に崩れ、6回2/3で降板したのだが、大谷がKOされた唯一の試合といってもよい。



 その結果がパ・リーグ随一の防御率1.43だ。2位はディクソン(オリックス)の2.22で、3位は西勇輝(オリックス)の2.53である。ズバ抜けている大谷の今季の防御率なのである。

 ここで注目したいのは今年の大谷は失点15で自責点も15と、味方の失策、捕逸等のバックの守備のミスが関係した失点がいまだにゼロということ。リズムよく投げているので、野手もミスなく守っている。野手のミスによる失点がない投手は、パ・リーグで規定投球回数に達している中では大谷のほか、西武十亀剣とオリックスの東明大貴の2人だけしかいない。

 投手の球威を率直に証明する防御率を裏付けるのは、相手に打たれた被打率である。大谷は312打数47安打で.151だが、同2位のディクソン(オリックス)は396打数92安打で.232だから、群を抜く大谷の被打率の低さだ。

 7月2日のオリックス戦で4対1とリードした7回一死後に、T-岡田に打たれた開幕から86イニング目の1本が、今年唯一の被本塁打である。次に少ないディクソンは3本、牧田和久(西武)でも4本。塩見貴洋(楽天)は大谷(94回1/3)より少ない88イニングで14本も打たれている。

 しかも大谷は・・・

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