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記録の手帳 / 千葉功

トリプルスリー達成者はみな翌年成績がダウン

 

筆者の思いつくままに月に一度書かせていただいた随想集も、今年はこれが最後である。14年ぶりに日本シリーズに出場したヤクルトソフトバンクの前に完敗した。今年誕生した2人のトリプルスリーはそろって日本シリーズに出場したが、2人とも不振に終わった。さらにシリーズが終了すれば、ヤクルト優勝の立役者の1人であるバーネットがメジャー挑戦を表明。アメリカ人にとって、メジャーが最大の目標であることをあらためて思い知らされた

スワローズの守護神バーネットがメジャー挑戦を表明


不動の守護神としてヤクルト14年ぶりVの原動力となったバーネット。シーズン終了と同時にアメリカ球界への復帰を表明した



 11月2日の退団表明の会見場でトニー・バーネット(32歳)は「夢に描き続けたメジャーに挑戦するチャンスをいただいた」と語っていた。

 今シーズンは41セーブを挙げ、阪神呉昇桓と並んでセ・リーグのセーブ王になったバーネットでも、やはり終極の目的はメジャー・リーグであった。来日6年目で自己最高の成績を残して来シーズンも安泰の地位があっても、メジャー・リーガーの夢は捨て切れなかったのである。

 バーネットのプロ野球生活は06年に始まっている。ダイヤモンドバックスと契約し、同年のルーキー・リーグで6勝4敗のバーネットは、07年はAクラスで8勝8敗、08年は2A級で11勝7敗と順調に成長。09年には3A級のパシフィックコースト・リーグで14勝8敗と、メジャーの一歩前まで来た。

 しかし、メジャー昇格がかなわないと知ると、10年からはヤクルトに入団。ここまで先発投手で来たバーネットは、日本1年目も16試合のうち15試合は先発していたが、防御率は5.99で4勝5敗。7月以降はファーム落ちして11試合に投げたが、防御率5.03で1勝3敗と二軍でもパッとしなかった。

 2年目の11年は中継ぎに転向し、48試合で1勝2セーブだったが、3年目の12年に57試合に防御率1.82、1勝33セーブで、岩瀬仁紀(中日)と並びセーブ王になった。だが13年は1勝8敗で7セーブとは、リードを守り切ろうと登板させても逆転されることが多かったことを示している。防御率が6点台では仕方ない。


 14年は防御率3.34と向上して1勝14セーブであり、今年は3勝41セーブとヤクルトの76勝のうち57.9%で勝利に貢献していた。それだけにチームとしては失うのは痛い選手だが、この先はメジャーでの成功を祈りたい。

 メジャー2年目の03年にレンジャーズで12勝をマークしたコルビー・ルイスはその後、泣かず飛ばずであった。しかし、08年に広島入りすると15勝、09年には11勝と立ち直り、レンジャーズに復帰。14年には10勝、15年には17勝9敗とエースに君臨しているが「広島での2年間は大いに勉強になった」と語っている。バーネットにもヤクルトでの6年間の経験を生かして、メジャーで大きく飛躍するのを期待したいものだ。

さらなる高みを目指して山田と柳田への期待


山田哲人とともにトリプルスリーを達成したソフトバンクの柳田悠岐。2016年シーズンではどんな活躍を見せてくれるのか。まだまだ伸びしろがあるだけに、今後の飛躍が楽しみな選手である



 トリプルスリー達成で名を上げたヤクルトの山田哲人とソフトバンクの柳田悠岐であったが、日本シリーズではともに振るわなかった。山田は第3戦で日本シリーズ新記録の1試合3本塁打を放ったが、ほかの4試合では15打数1安打の0打点。一方の柳田も最後の第5戦で2打点を挙げたものの通算19打数3安打の打率.158に終わった。

 トリプルスリー達成者は翌年、成績はみなダウンしているが・・・

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