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記録の手帳 / 千葉功

2017随想集(3) ──5月のプロ野球から──

 

5月のパ・リーグは楽天が連敗知らずで2位のソフトバンクに3.5ゲーム差をつけて首位を走っている。一方、セ・リーグでは阪神が6日から27日までトップに立っていたが、28日には広島が首位を奪い返し、23日から5連勝のまま交流戦に突入した。開幕以来、巨人戦には10勝1敗と、5月末までの広島の貯金12の大半は巨人から奪ったものである。現在勝率.620の広島だが、巨人戦を差し引いた成績は21勝18敗1分けと図抜けているわけではない。今号は随想集として5月の球界で気になったことを書き綴ってみたい。(記録は5月31日現在)

シーズン開幕から好調な打線を武器にセ・リーグの首位を走る広島。特に巨人戦では圧倒的な強さを見せている。写真は四番の鈴木誠也


ベンチにも好選手がいる広島打線の充実ぶり


 巨人に圧倒的に強いからということで、広島の上位が保証されるわけではない。昨年までの巨人戦でチームが勝ち越したのは18度あり、5つ以上を勝ち越したことも3度もある。

1960年 17勝8敗1分け
1964年 17勝11敗
2015年 15勝10敗

 だがこの3年間で広島が優勝したのはゼロである。60、64、15年といずれも4位であった。昨年までに7度優勝しているが、その年の巨人戦の成績は以下のとおりだ。

1975年 14勝11敗1分け
1979年 9勝15敗2分け
1980年 11勝13敗2分け
1984年 12勝12敗2分け
1986年 14勝11敗1分け
1991年 15勝11敗
2016年 13勝12敗

 広島が優勝した年で勝ち越したのは4度あるが、どれも互角の戦いだった年が多い。その中で今季の10勝1敗は特筆すべき成績である。巨人が勝ったのはエースの菅野智之が1対0で完封した4月25日の1試合だけ。チーム打率からしても広島の.299、13ホーマーに対して巨人は.208で7本だ。

 その中で気になるのは広島の一番に定着している田中広輔が巨人戦では45打数6安打で.133とまったく振るわぬことだ。ほかの選手は文句なしの打率であり、10打数以上の選手の打率はこうである(名前の右から打数、安打、打率、本塁打)。

松山竜平 22-11、.500、1本
鈴木誠也 40-16、.400、1本
堂林翔太 10-4、.400
エルドレッド 31-11、.355、6本
安部友裕 31-11、.355
菊池涼介 48-16、.333、2本
石原慶幸 13ー4、.308、1本
丸佳浩 46-13、.283
新井貴浩 15-4、.267、2本
會澤翼 23-6、.261

 ほかにも小窪哲也は9の4の.444であり、西川龍馬も7の3の.429。特に西川は5月の巨人戦最後の28日に2対2の同点で迎えた10回表二死二塁で代打に起用され、左翼の頭上を越える値千金の二塁打を放つなど、控え選手の活躍も著しい。ベンチ入りメンバーのどこを取っても充実しているのが今季の広島なのである。

新天地で奮闘する2人の外野手


 筆者は2人の外野手がいま気になってしまう。日本ハム大田泰示と巨人の石川慎吾である。今季から新たなユニフォームで再出発した2人である・・・

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