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岡田彰布コラム

今年は新人の豊作の年やな。若手がレギュラーを取るときはチーム事情などのタイミングもある。若手が出てくるとワクワクするわ!

 

今年は新人の好素材が多く集まっているわ


 この号が出るころ、ちょうどプロ野球は2カード目で、開幕カードを詳しく解説できないのが、すごく残念や。日程の巡り合わせで雑誌には締め切りがあり、こういう事態はよく起きることだが、そういうときこそ、より興味深くタイムリーな話題を読者の皆さんにお届けする。これが大切なこと……と、オレなりに考えている。

 シーズンスタートを書けないのなら、こういう話でどうか。今年はルーキー豊作!近年では珍しく新人選手の好素材が集まり、野球界を変えてくれるのではないか。そういう期待を抱かせてくれている。そういう話題を中心に進めていくことにしますわ。

 まず、1979年11月のことを書く。いまから37年前のことよ。オレが早稲田大からドラフトされる年。結局、ドラフト会議で6球団に1位指名され、クジの結果、阪神に引き当ててもらったわけやが、そのときの「同期」には、どういう選手が1位指名されたか、覚えていますか?37年も前のことやから、もう忘れられているだろうから、あらためて、ここで紹介すると……。ヤクルト=片岡大蔵投手、巨人=林泰宏投手、阪神=岡田彰布内野手、中日=牛島和彦投手、大洋=杉永政信投手、広島=片岡光宏投手。これがセ・リーグで、パ・リーグはというと西武=鴻野淳基内野手、南海=名取和彦投手、ロッテ=竹本由紀夫投手=入団拒否、翌年ヤクルト1位入団、日本ハム=木田勇投手、阪急=木下智裕投手、近鉄=藤原保行投手。これが、この年のドラフト、1位選手やったんですわ。

 こうやって、振り返るとホンマ、懐かしいけど、この中で1年目から一軍で試合に出たというと木田さん、名取さんくらいか。特に木田さんはすごかったもんな。とにかくそのシーズンのパ投手部門タイトルを総なめにしたんやから。勝数も22勝やったんと違うかな。いきなり20勝超えよ。文句なしの新人王やったわ。

 一方、セ・リーグの新人王は誰やったか?いやー、オレですよって!木田さんほどの活躍はできなかったけど、シーズン途中からレギュラーになって、それなりの数字を残した。オールスターに選ばれたし、自分なりに頑張った……と思えた1年目やったもんな。そのとき、感じたのが、やはり野球はタイミングと環境やな、とね。というのも、うまくタイミングが合えば、ルーキーでもレギュラーをつかめるということよ。例えば内野手が不足しているチーム事情のところに入団すれば、新人内野手でも、レギュラーになれるチャンスが大きいということ。そういう意味では、オレが阪神に入ったときは、阪神の内野陣はそら強くてな。掛布雅之(=現二軍監督)さん、真弓明信さん、中村勝広さん、藤田平さんと、そら強固な内野陣やったもんね。エラいところに入った……と正直、思ったし、チーム内の競争に勝つことが難しかった。そういうチーム構成のところに入ると、なかなかレギュラーは難しくなる。こういうのも縁というか、タイミングというか、本人が持ってるか、とか、いろいろな要素が絡みあって、新人から活躍できるかどうかが、決まってくるんやと思うな。

 そういうところで、今年のルーキー、それもドラフト1位やけど、近年では希な豊作と言えるんやないかな。大卒、社会人からの入団はみんな即戦力よな。こういう年は珍しい。1年目から、かなりのドラフト1位選手が活躍するだろう……という予感がする。それほどの素材ばかりよな。

阪神の高山もいいがオリ・吉田はオオッ!や


今年はワクワクするようなルーキーが多い。阪神の高山も即戦力や


 中でも阪神の高山俊の評判がいい。確かにいい選手よな。そして先に書いたようにいいタイミングで入団してきたわ。マートンが退団し、外野のポジションが空いた。福留孝介だけが決まって、残り2つのポジションが空いたところに入団し、若手での争いが待っていた。それをキャンプ、オープン戦で勝ち残り、ついにポジションを獲得したのだから、与えられたものではない。勝ち取ったものやから、胸を張ってもいい。力がないと、ポジション争いにも負けるよ。プロは力の世界よ。それがベースにあって、タイミングとかキッカケで勝ち抜けるわけ。高山は堂々と開幕から勝負してほしいと思うね。

 それにオオッと思わず声が出たルーキーが現れたよな。オープン戦最後になった阪神対オリックス戦。オレはデイリースポーツの評論で京セラドームにいたのやが、その目の前で藤川球児からホームランを放った新人。それがオリックスの1位、吉田正尚やった。この選手はいいよ。とにかくスケールが大きいし、飛ばす力を持っている。これは才能よ。スイングスピードが速くて、思い切り振れるところが素晴らしい。高校時代(敦賀気比高)のことはあまり記憶にないのだが、大学に行き、全日本での映像を見て、こりゃいいぞって思っていたけど、実際に生で見たら、想像以上やったわな。

オリックスの吉田の打撃にはあらためてスケールが大きいと感じたよ


 この吉田もタイミングがいいわけよ。そらそうやろ。オリックスの外野を見れば、糸井嘉男だけがポジションが決まっている。新外国人もアテにできないし、吉田は十分に外野の一角に入り込めるし、オレの意見としたら、使うべきやと思うね。パ・リーグはDH制で、それも吉田にはプラスになる。あの打力は魅力タップリやし、出せばかなりの数字を残すと見ている。チームにとっても新しい戦力で、勢いがつくと思うんやが……。

 この2人を筆頭に、今年の1位はほとんどが即戦力だし、1位以外にも、例えば巨人2位の重信慎之介、さらにDeNA戸柱恭孝のように下位指名でも、先発から使える選手が多くいる。今年は新陳代謝のシーズン。若い選手がどんどん出てくると思うと、ホンマ、ワクワクするよね。こういう流れになると野球は面白くなる。若手とベテランの戦い……。球界の楽しみが膨らんでいくってことよ。(デイリースポーツ評論家)
岡田彰布のそらそうよ

岡田彰布のそらそうよ

選手・監督してプロ野球で大きな輝きを放った岡田彰布の連載コラム。岡田節がプロ野球界に炸裂。

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