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岡田彰布コラム

小久保監督は「お疲れ様」やった。今後、日本代表監督は急いで決めなくてもいい。選ぶ基準を明確化するほうが先決やろ

 

小久保監督は準決勝敗退後すぐに退任を明らかにしたが、その気持ちはよく分かる。今後の監督選びは、まず選出基準を明確にすることが先やわ


立場が違えど小久保監督の気持ちはよく分かるわ


 この原稿、オレは広島のホテルで書いている。3月30日、開幕前日である。デイリースポーツ新聞社の評論の仕事のため、前乗りしたわけだ。いよいよ開幕か……。広島対阪神のオープニングカードだ。じっくりと見つめ、両チームの今季の可能性を探る。そして、週ベにオレなりの見解を記そう……と力が入っているところに、また“あの担当者”からのゾッとする要請が送られてきた。

「毎度、毎度、すいません。実は開幕に絞って書いてほしいところなんですが、それを待つと、締め切りが遅れるんです。でもって、今週のテーマから開幕を外してください。大丈夫でしょうか? よろしくお願いします」。悪いなんて、サラサラ思っていないぞ、アイツは。なんだかんだで、注文の多いこと。もう慣れてはいるけど、さて、今週は何を語ればエエんかいな?

「WBCの余韻が残っている間に、ジャパンの監督問題について……というのはいかがですか」ときた。侍ジャパンの監督人事に関して、どうこう語れる立場でもないけど、オレなりの意見、気持ちを表してみることにしたのです。

 小久保(小久保裕紀)監督がWBC終了後に退任を明らかにした。これだけでも、監督のつらさ、苦しさが分かる。そこに触れる前に、オレが監督を退いたときのことを、あらためて記すことにするわ。侍ジャパンの監督とは環境、条件など比較することはできないけど、同じ「監督」として、辞める決断は簡単ではない。これは共通していると思うな。

 2004年に阪神の監督になり、中長期的な構想の中で、チーム強化に務めた。初年度だけがBクラス4位だったけど、それ以外4年間は優勝、Aクラスに入り、それなりにチームは強くなった……と自負している。だけど最後のシーズンは、持っていた自信が崩れ落ちていくようやったわ。そう、監督5年目の2008年シーズンよ。週ベでも何度も書いてきたとおり、あのシーズンはまさに思いどおり、シナリオどおりに進んでいたわけよ。気がつけば2位に2ケタのゲーム差をつけ、ぶっちぎりで優勝できる、優勝するもんやと信じて疑わなかったわな。

 別に首脳陣、選手に気のゆるみがあったわけではない。コーチが安易に「優勝」と口にするから、それをたしなめた。胸の中の自信とは別に、表向きは常に慎重やった。でも9月からかな……。チームの戦い方にズレが生じた。勝ちパターンに持っていけず、それでも勝つことはあったけど、オレは危険な香りを感じ取っていたわ。

「この状態では優勝できん。巨人にやられる」。不安が的中してしまった。

 最大13ゲーム差もあった巨人に10月、ついに逆転された。巨人優勝の夜、阪神は横浜にいた。試合後、重苦しい空気の中、番記者はV逸のコメントを求めたが・・・

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岡田彰布のそらそうよ

岡田彰布のそらそうよ

選手・監督してプロ野球で大きな輝きを放った岡田彰布の連載コラム。岡田節がプロ野球界に炸裂。

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