監督としては、打線全体が好調なときは反動が怖い
そのとき、オレは甲子園の放送席に座っていた。5月24日、注目の
阪神対
巨人。解説の仕事で、グラウンドを見つめていたとき、痛々しい瞬間を見ることになった……。
鳥谷(
鳥谷敬)が顔面に死球を受けたのである。巨人の吉川(
吉川光夫)の球が抜けた。アッと声が出たとき、鳥谷は倒れていた。トレーナーが走る。金本(
金本知憲)監督が飛び出してくる。タンカが運び込まれる。見れば流血……。顔に当てたタオルが赤く染まっていく。鳥谷は立ち上がり、自力でベンチに戻ったが、オレはどうしても後遺症が気になった。次の日からの出場はどうなのか。連続試合出場の記録が途絶えるのか……。何より好調を誇っていた鳥谷が、離脱するようなことになれば、チームにとって大きな痛手になる。
そんなアクシデントに見舞われた今回の連載。やはり優勝を目指す阪神にとって、巨人は絶対に倒さないといけない相手だ。巨人を圧倒することが優勝の条件。オレはそこまで伝統の一戦の重みを感じている。
選手時代に優勝した1985年。コーチとしての2003年、監督としての05年。3度の優勝時、巨人との戦いでは圧倒。すべて勝ち越している。いわば優勝=G戦勝ち越し。これが定義なのだ。
時代の流れで、巨人に対する思いは昔ほどではなくなっている。どこに勝っても1勝は1勝。ファンの感覚も、そのようになっているような気がする。だが昔は違った。ほかのチームに負けても、巨人にだけは勝て!ファンの声がストレートに聞こえてきたもんよ。
オレは小さいときから阪神ファンで、アンチ巨人の環境で育った。だから人一倍、巨人に対するライバル心というのか、特別な感情があったわな。だから選手時代も、指導者になってからも、巨人に負けたら、ホンマ、気分が悪かったわ。
そういう意味で、巨人との戦いは、阪神にとって重要で、優勝へのポイントになると感じ続けた。そして時を経て、今シーズン、阪神はいいスタートを切り、優勝のチャンスを迎えている。そこでのTG戦。オレはこの連戦、ホンマ、注目していたわけよ。
実は少し心配する点があった。というのもあれだけ好調だった打線に、陰りが見え始めた……というところよ。ここまで阪神はホンマに状態が良かった。それも打線全体が好調だったわけで、もしこれが下降線になったら、どうするのか……と気になっていたわけよ。
オレの経験からいけば、好調期というのは・・・
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