週刊ベースボールONLINE

ファーム選手クローズアップ 輝け!未来のスターたち

中日・石川駿「まずは1本、自分の理想とする打球を」

 



 いま振り返るだけで、表情がこわばる。「今年はずっとつらかった」。ドラフト4位でプロに飛び込んだ石川駿の1年目は、重く、苦い記憶で塗りつぶされた。

 投手も含めた中日の新人9選手の中で唯一、一軍出場なし。二軍戦でも19試合で計53打席に立ち、わずか2安打しか放てなかった。即戦力にはほど遠く、周囲の視線が痛かった。「素直に自分の力不足。舞台が変わると、やってきたことができなかった」。思い描く形や動きと、実際の姿の隔たりが埋まらない。「引き出しを増やそう」とさまざまな意見を取り入れ過ぎたことで、かえって自分を見失う。焦りが生まれ、さらに深みにはまる。出口の見えないトンネルだった。

 ケガの影響があったのも事実。シーズン序盤は腰痛に苦しみ、およそ1カ月半をリハビリに費やした。復帰したその日には、打球が当たって左鎖骨周辺の上部肋(ろく)軟骨を骨折。再び約2週間の戦線離脱を余儀なくされた。

 だが、決して言い訳はしない。いや、できない。

「腰を痛めたのは自分のスイングが良くなかったからだと思う」

 それに、いつも新たな環境では“つまずき”から始まった。明大入学時は、北大津高時代に骨折した左手首の影響で出遅れ。JX-ENEOSの1年目は盲腸になった。「だから、慣れっこ」。大学は4年、社会人では2年。結果を残してはい上がってきた。プロでも、マイナスからのスタート。そう思うようにした。

 夏場には故障も癒えたが、二軍の遠征に参加でないことも。ナゴヤ球場に隣接する屋内練習場で、ただ一人マシン打撃をした。いまにも折れそうな心。奮い立たせるには、練習しかなかった。

「自分はプロ。投げ出すわけにはいかない」

 昼過ぎに決められたメニューを終えると・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

輝け!未来のスターたち

輝け!未来のスターたち

1軍での活躍を目標に2軍で力を蓄える若手選手を紹介する連載企画。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング