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京大からドラフト2位で入団 千葉ロッテ・田中英祐が感じたプロの壁

 

プロ1年目の今季は一軍で2試合6回0勝1敗0H0S、防御率13.50に終わった



シーズン後半は二軍登板も果たせず試行錯誤の日々


 いよいよ今年も“運命の日”がやってくる。明日22日、プロ野球ドラフト会議が行われる。今年は高校生にも大学生にも逸材が揃っているだけに、球団も頭を悩ましているのではないだろうか。

昨年のドラフトで千葉ロッテから2位という高い評価を受けプロ入りした田中



 昨年のドラフトで、史上初の京都大学出身のプロ誕生で注目を浴びたのが、千葉ロッテに2位指名された田中英祐だ。京大からプロという前人未到の道を選択した田中のプロ1年目は、果たしてどうだったのだろうか。

「これまでの人生で一番、野球と向き合いましたね」

 田中はそう言って今シーズンを振り返った。

 開幕こそ一軍とはならなかったものの、イースタンリーグで2試合に登板して2勝を挙げ、14イニング連続無失点を記録するなど、田中のプロ野球人生は、順調な滑り出しだった。

 一軍に昇格したのは4月29日。その日の埼玉西武戦で、田中はプロ初登板初先発を果たした。だが、結果は3回6安打5失点で敗戦投手となった。その2日後の北海道日本ハム戦、今度は中継ぎとして登板機会を与えられたが、3回6安打4失点。まさにプロの洗礼を浴びたかたちとなった。

「あんなに多くの観客が入った中で投げるのは初めてで、地に足がついていないという感じでした。そんなことはこれまでの野球人生ではなかったことです」

 結果を残すことができず、田中は再び二軍行きを命じられた。しばらくは一軍でのピッチングを引きずり、なかなか気持ちを切り替えることができなかったという。そして調子も、最初の頃には戻らなかった。一番の原因はあれもこれもと考えすぎるあまり、自分のピッチングを見失ってしまったからだという。

「こんなにうまくいかないもんなのか、と思うほど、すべてがうまくいきませんでした。自分の感覚と実際に投げているボールにズレが生じて、思い通りのボールがいかないんです。コントロールもつかなくて、特に後半戦はこれまでに味わったことがないくらいにしんどかったです」

 結局、田中は自分のピッチングを取り戻せないまま、後半戦はイースタンリーグで一度も登板せずにシーズンを終えた。

 ようやくかすかな光が見え始めたのは、フェニックスリーグを数日後に控えた9月末のことだ。小谷正勝二軍投手コーチから「もっとシンプルに考えろ」というアドバイスを受けたことがきっかけだった。

「いろんなところに意識を置いてしまうと、ダメなんだなと。もう一度、シンプルにやろうと思いました。とにかく今は、投げる時のリズムをつかもうと思っています。自分にとっていいリズムというのが必ずあるのですが、今は1球1球違っていたり、あるいは日ごとに違っていたりと、続けることができないんです。まずはそのリズムをしっかりとつかむというところを一番のポイントにしています。今、少しずつですが良くなってきているという実感があります」

 これまでに経験したことのない悔しさと苦しみを、田中はプロ1年目に味わった。これを無駄には絶対にしない。

「意味ある失敗として、今後に活かせるようにしたい」

 今シーズンの苦労が、今後どんな花を咲かせるのか。田中の2016年シーズンに向けた戦いは既に始まっている。

文=斎藤寿子 写真=BBM
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