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同郷の先輩・梶谷隆幸との共闘を誓う元SB白根尚貴の覚悟

育成契約は固辞した白根だが、古巣ソフトバンクへの恩は忘れないという

 

鳴り止まなかった祝福メッセージ


 その日は電話の着信やメッセージが鳴り止まなかった。

 11月17日、DeNAに支配下選手として入団が決まったことが球団から発表されると、元ソフトバンク白根尚貴は多くの祝福への対応に追われた。

「皆さん心配してくれていたみたいで。母、恩師、友人…自分のことのように泣いてくれた人も多かった。本当にありがたいです。10日に(12球団合同)トライアウトを受けて以来、数日間、どきどきしっ放しでした。ほっとしましたね」

 22歳は飛び切りの笑顔で感謝と喜びの言葉を口にした。

「持ち味は見せられた」

 2本の長打を含む3安打を放ったトライアウト直後、手ごたえは感じていた。それでも、契約にこぎつけられるという確信があったわけではない。それは白根が「支配下契約」にこだわったからだ。

 今季圧倒的な強さで2年連続日本一に輝いたソフトバンクからは来季も育成選手として契約を結ぶ打診があった。だが、それを固辞した。

「1カ月くらいずっと悩みました。ホークスには指名していただいて、育てていただいた恩がある。ここから這い上がって活躍したいという思いも強かった。だが、育成選手だと1軍には規定で出られない。プロとしてこの世界に入ったのだから、1軍にはいつでも出場できる状態でいたかった」

 強心臓が持ち味のスラッガーだが、退路を断つという決断をするまで胃の痛みが収まらなかったという。そして、いざ挑んだトライアウト。

「『絶対に支配下』という条件を口にしていたので、ハードルは高かったんですが、本当に声をかけていただいてよかった」

2年ぶりの支配下登録も不安なし


 身長185センチ、体重85キロの現在はすらりとした体型だが、島根・開星高時代は今より20キロ重い105キロの堂々たる体格で「島根のジャイアン」として名をはせた。2012年にソフトバンクにドラフト4位で入団。「練習をしたことがほとんどなかった」という高校時代は甲子園で完封するなど、投手として結果を残していたが、持ち前のバッティングセンス、パワーを生かすため、打者に転向した。

 余談だが昨年末、大リーグの某球団関係者から電話があり「2Aで投手としてやらないか」と誘いがあったという。「何でいまさら」と苦笑した白根だが、そのくらい投手としての評価も高かった。

 今やホークスのエース格になった武田翔太らとともに、大きな希望を抱いて飛び込んだプロの世界。だが、入団後は故障に悩まされた。右ひじの手術や肩の亜脱臼などで実戦に出始めたのは実質3年目から。同年は3軍で10本塁打を放つなど、一定の結果は残したものの、オフには育成契約となった。

 今季は2軍の開幕スタメンをつかむと、序盤に3本塁打を放つ絶好の滑り出し。最終的に59試合に出場し打率274、3本塁打、14打点。3軍では52試合に出場し打率335、6本塁打、30打点と成績を出した。再支配化は勝ち取れなかったが、この1年で1軍で活躍する自信がついたのも事実だ。マエストリオリックス)から本塁打を放つなど、1軍級の投手からも結果を出してきたからだ。

「昨年から試合に出るようになり、プロの球にも目が慣れ始めた。もっとあげていきます」支配下として返り咲く来季、不安はほとんどないという。

目標は開幕1軍


トライアウトでは2本の長打を含む3安打を放ち、“再就職”を勝ち取った



「まさか横浜に行くことになるとは」

手を挙げてくれたDeNAは正直、まったく予想していない球団だった。トライアウト後、高田GMが「うちはチーム事情で獲得することはないと思う」とコメントをしていたのを、報道で聞いていたからだ。

「驚きましたが、本当に良かった。先輩もいますしね」
 先輩とは、開星高校の5学年上、梶谷隆幸のことだ。昨季は盗塁王。今季はオールスターにも出場するなど、チームの顔になりつつある背番号3は、入団が決まるとすぐに電話をくれた。関東にまったく縁がない白根のために、住居の心配などをしてくれたという。「同郷の先輩がいるのは大きい。いろいろ教えてもらうつもりです」
 ソフトバンク時代、白根のポジションは1、3塁が主だったが、今季3軍戦で2塁も経験。新天地では外野にも挑戦するつもりだ。

「チャンスがあればどんなことでもしてみるつもり。失うものは何もないという気持ちで、死に物狂いでやります」

 当面の目標は開幕1軍入り。そのために、春季キャンプ、オープン戦からがんがんアピールしていく。

「結果を残し続けて、梶谷さんとスタメンを組んで大暴れしたい。それが今までお世話になった人への一番の恩返しだと思う」

 今季、ソフトバンクでは育成選手だった亀澤恭平が新加入した中日で大ブレークを果たした。それに負けない活躍を白根も見せることができるだろうか。

写真=田中慎一郎

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