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巨人・鈴木尚広のコラム

今回のテーマ「引退」

 

心の準備ができない


10月13日に都内ホテルにて引退会見。すがすがしい表情で充実の20年間と、完走をうかがわせた


 読者の皆さんには驚かせてしまったかと思います。あらためてのご報告となりますが、10月13日に発表をさせていただいたように、2016年シーズンをもって、現役を引退、ジャイアンツのユニフォームを脱ぐ決断をしました。引退会見からだいぶ時間が経ちましたが、自分の中ではまだプレーヤーでなくなる実感がなく、不思議な感覚が続いています。

 先に近況報告をさせていただきますと、DeNAとのクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージの第3戦を終え、引退を発表してから、ありがたいことにテレビ、ラジオ、新聞、そして雑誌などのお仕事をいただき、また、お世話になった方へあいさつにうかがったりと、忙しく過ごさせていただいている最中です。20年間、プロ野球の世界に身を置いていましたから、種類の異なる忙しさが新鮮で、勉強になっています。

 先日は広島日本ハムの日本シリーズも3試合、スポーツ紙の観戦記とラジオ解説などで見る機会をいただきました。現役時代は自分の準備に試合中の時間を使い、「自分がどの場面で出場するのか」に集中していましたから、どちらがリードしているのか、相手のピッチャーは誰なのか、という情報しか頭の中に入っていませんでした。真剣に見ると、序盤から気が抜けないですね。巨人に入団してからの20年間、他球団の試合をまるまる1試合見るのは初めて。視野も広がりましたし、これは新しい発見でした。

 最高峰の戦いを見ていても、そこに立って、自分もプレーしたいという感覚がなくなってきているのも1つの発見でした。現役時代はジャイアンツが出場しない日本シリーズは見たくもなかったものですが、冷静に見ることができています。このような気持ちになったということは、引退の決断に間違いはなかったのでしょう。ただ、体はどうしても反応してしまいます。けん制がどうか、ピッチャーにクセはないか。バッテリーと走者の駆け引きも大好きなので、こればかりは仕方がないですね。

 会見では引退の理由を「心の準備ができなくなってきた」と説明しました・・・

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鈴木尚広『快足の“すゝめ”』

鈴木尚広『快足の“すゝめ”』

普段の様子ももちろんですが、特に僕とは切っても切り離すことができない“走塁”について、考え方(僕の哲学)やテクニック、トレーニング方法などをお伝えしていければと思っています。

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