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勝利に導くワンプレー

英断と教訓 内川聖一&小久保裕紀監督/WBC2次ラウンド第2戦vsキューバ

 

小久保監督の決断で送り出された内川が決勝点をたたき出した


 無視することができない教訓を得た。

 3月14日に行われた2次ラウンド第2戦のキューバ戦(東京ドーム)は、山田哲人の先頭打者アーチで日本が1点を先制するものの、直後の2回表に逆転を許し、3度リードされて3度追いつく、シーソーゲーム。ハイライトは5対5で迎えた8回裏の攻撃だろう。

 一死一、三塁、打順は九番の捕手・小林誠司の場面だ。「基本的に同点のとき、勝っている場面ではキャッチャーはそのままと決めている」とこれまで繰り返し話していた小久保裕紀監督だったが、この日は代打に内川聖一を送り出している。

 勇気のいる難しい決断だったと思う。この日、2安打1打点もさることながら、今大会を通じて印象的なパフォーマンスを見せるラッキーボーイに、そのままこの場面を託す選択肢もあったからだ。代打を命じられた内川も指揮官を慮る。「誠司が2本ヒットを打っていましたので、監督も相当、迷ったと思います。2本打っているバッターに代打で出るというのは、相当の覚悟を持たないといけない。いつも以上に緊張して(打席に)入りました」。

 内川は2度のWBC出場(うち1回は優勝)など国際経験豊富で、何より16年のプロキャリアで通算打率.310を誇る球界随一のバットマン。代打は不慣れなポジションであり、「プレーボールから100パーセントで入れるわけではないので、代打は難しい」と正直な思いを口にするが、「打席に入ってしまえば変わらない」と早くも対応法を見出していた。

内川の犠飛で松田が決勝のホームを踏んだ


 結果、代打策は成功。カウント1ボール2ストライクから外角へ逃げるスライダーを右翼へ高々と打ち上げ、勝ち越しの右邪犠飛に。試合後、「今日のあそこは勝負だな、と。(内川は)さすがと言いますか、あそこで犠飛を打ってくれた。あの1点で今日は行けたと思いました」と小久保監督は決断を振り返ったが、勢いに任せず、より得点の可能性の高い策を選択した、この決断こそ勝因の1つといえる。

 なお、内川の決勝犠飛でホームを踏んだ松田宣浩が相手エラーによる走者だったことを忘れてはいけない。

 この試合は打撃戦になりはしたが、8回表まで両国無失策。8回の日本の攻撃はショートからの送球(松田の平凡な遊ゴロ)を、ファーストが捕球ミスをしたところから突破口を開いている。キューバのマルティ監督も「いい試合だったとは思いますが、1つのエラーからこの試合の勝敗が決まった」と敗因を分析。日本も教訓にすべきである。

文=坂本匠 写真=高原由佳、小山真司
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