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勝利に導くワンプレー

四番の条件と日本の伝統 筒香嘉智/WBC2次ラウンド第3戦vsイスラエル

 

筒香が四番の一撃で一気に試合の流れを引き寄せた


 チームが苦しいとき、ここ一番で仕事ができること。

 小久保裕紀監督が日本代表の四番打者に求める条件だ。3月15日に行われた2次ラウンド第3戦のイスラエル戦(東京ドーム)は、今大会ここまで6戦すべてで四番を任されてきた筒香嘉智が、ひと振りで試合を決めた。

 スコアの動かぬまま迎えた6回裏の攻撃である。先頭で打席に立った主砲は、「とにかく強い打球を打って、塁に出ようと思っていました」とその一点に集中。イスラエルの2番手・アクセルロッドの2球目、真ん中高め141キロのストレートを逃さなかった。快音を残した打球は、大きな放物線を描いてセンターバックスクリーン右に着弾。この豪快なホームランが呼び水となり、この回打者一巡、5本の長短打を初対戦のイスラエル投手陣に浴びせる猛攻で、一挙5得点を奪い試合を決めた。5回までに6残塁とつながらなかった打線がウソのよう。

 こう着状態を打破する四番の一打。筒香自身は「四番どうこうより、チームが勝てればそれでいい」と素っ気ないが、自身も現役時代に長く四番を打った指揮官は「日本の四番の筒香が流れを作ってくれた」と納得の表情を見せている。

先発の千賀は5回を1安打無失点の好投で試合の流れを手放さなかった


 この小久保監督のコメントには補足の必要があるだろう。正確には「流れを作った」のは筒香ではなく、打線の援護が得られない中で粘り強くイスラエルのスコアボードに6個のゼロを並べた先発の千賀滉大、6回表に2番手で登板した平野佳寿の投手2人と、それを支えたバックの守備だからである。流れを勝利に結びつけたのが、筒香のバットというほうが正確だ。

 イスラエルのウェインスタイン監督も日本の勝因を的確に言い表している。「野球は試合の流れが重要なスポーツです。日本は素晴らしい投球、タイムリーな打撃で流れを引き寄せました」。

 6回表には一、二塁間を襲う痛烈な打球を、二塁手の菊池涼介が体を投げ出しながら抑えてアウトにする超美技もあり、球場が盛り上がり始めた中で出た四番・筒香の一発。「守備でリズムを作り、攻撃につなげる」は日本の伝統的なスタイルで、これが見事に形になったわけだ。決勝ラウンドでも、そんな日本代表の姿が見たい。

文=坂本匠 写真=小山真司、高原由佳
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