昨年の開幕戦、1点ビハインドの9回裏、右中間へ同点の三塁打を放った栗山
勢いを増した打球が右中間を切り裂いた。ライオンズファンの大歓声に後押しされるように
栗山巧は三塁へ到達。背番号1はベース上で力のこもった熱いガッツポーズを見せた。1年前の開幕戦、
西武プリンスで行われた西武対
オリックス。3対4と1点ビハインドで迎えた9回裏、一死二塁から栗山が
コーディエの154キロを振り抜き、同点打を放った。続く
メヒアがセンターへサヨナラ打を運び、劇的な逆転サヨナラ勝ちで西武は開幕戦を飾った。
「左打者として右中間に強い打球を飛ばすのは、一つの理想ですから。開幕戦の一打は昨年の中でも1、2を争ういいバッティングでしたね」
昨年はプロ野球史上120人目の1500安打をマーク、球団では初の生え抜き2000安打にも邁進する。しかし、視界は決して良好ではない。
木村文紀、
田代将太郎ら足や守備で勝る選手が台頭。キャンプからポジション争いにさらされた。南郷キャンプ打ち上げ後も帰京せずにチームに帯同し、実戦でアピールを続けた。再びラインアップに名を連ねるにはバットで魅せるしかなかった。
キャリアを積み重ねる中で技術を突き詰めてきた自負はある。今年、あらためて考えた。「まだ手を付けていないところはどこか……」。出てきた答えはストレッチ。もちろん、これまでもやっていたが、標準レベル。伸びる余地があると思える分野だった。自主トレから、前屈一つに対しても真剣に取り組んだ。
今年で34歳になるが、「プロ野球選手は35歳からスタート」という信念もある。
「35歳から踏ん張れる人はすごい。もちろん35歳まで活躍したら選手として評価されますけど、そこからさらに成績を挙げたら揺るぎないものになる。僕らの大先輩である和田(一浩)さん、松井(稼頭央、
楽天)さんもそうでしょう」
オープン戦では10試合に出場して、打率.321をマーク。開幕スタメンは濃厚だ。3年連続Bクラスからの脱却を目指す2017年。右中間へ、勝利を呼ぶ打球を何度も見せてくれるはずだ。
文=小林光男 写真=川口洋邦