ジャクソンは明るいキャラクターで、選手、スタッフ一丸の雰囲気を作っている
新年度が始まり、髪形や服装などを一新、心機一転している方も多いのではないだろうか。変化があるのはプロ野球界も同様だ。
広島の通訳を務める松長洋文さんの口周りにはヒゲが生え、ダンディないでたちとなっていた。
単なるイメチェンかと思って聞いてみると、そこには意外な理由があった。
「実はジェイが『ブルペン陣みんなで生やそうぜ』と言い出したんです。選手だけでなくスタッフも含めて。僕も『そったら怒るぞ』って言われています(笑)」
“ジェイ”とは、広島のセットアッパーを務めるジェイ・ジャクソンのこと。立派なヒゲを蓄えたコワモテな風貌と、150キロを優に超えるストレートをグイグイと投げ込むパワーピッチのためにマウンドでは迫力十分だが、実際には無失点に抑えた後に見せる笑顔がかわいい愛されキャラであることは、広島ファンにとっては常識だろう。
ジャクソンは「『ブルペン陣で何か一つのことをできたらいいな』と思ったんだ」と自身の発案の意図を明かす。「僕には経験があるし、もしチームメートに必要とされればアドバイスを送りたい。強い闘志を伝えていきたいね」と献身を誓っている。
「ジェイはみんなの盛り上げ役になってくれています。1年目にしっかり成績を残しましたし、言葉に説得力も増していますね」と松長さん。
今村猛ら、“ヒゲ賛同者”も多く、仲間たちのきずなはより強固なものになっている。
昨季に25年ぶり優勝を果たした広島。快進撃の裏には強力なリリーフの活躍があったが、それもお互いにカバーし合い、「ゼロ」でつなぐという意識が徹底されていたからだ。
3月に開催されたWBCでは準優勝に輝いたプエルトリコ代表選手たちが金髪に染め、チーム一丸となって戦っていた姿は記憶に新しい。今季の広島ブルペンもまた、個々の力以上の団結力を見せてくれるはずだ。
文=吉見淳司 写真=榎本郁也