頭部に死球を受け、投手に詰め寄ろうとする楽天・藤田
「ボールがバレーボールくらいの大きさに見えた」
言葉の主は、4月14日の
日本ハム戦(Koboパーク宮城)で日本ハム・
公文克彦から頭部付近に死球を受けた楽天・
藤田一也だ。直後、相手に激しく詰め寄ると、グラウンドには両軍の選手、監督、コーチが飛び出し、一触即発ムードとなった。顔面や頭部付近への死球は負傷離脱にとどまらず、選手生命の危機にもつながりかねない。バレーボールとは違う硬球が迫ってきた恐怖と、それに対する怒りは無理もなかった。
4月4日の
阪神対
ヤクルト(甲子園)でも、阪神・
藤浪晋太郎がヤクルト・
畠山和洋に投じた顔面付近への死球がきっかけで乱闘騒ぎとなった。その結果、ヤクルトの
バレンティンと阪神の
矢野燿大コーチが退場。この際にはバレンティンの大立ち回りばかりがクローズアップされたが、引き金となったのはもちろん顔面付近の死球であり、バレンティンの暴力行為もチームメートの身を案じてのものだった。
繰り返しになるが、150キロ前後の球を頭部に受けるということは、生死に関わる大事故につながりかねない危険なもの。私が以前取材していたボクシングの試合では、何度も不幸な事故を目の当たりにしてきた。だからこそ、強く思うのだ。
ソフトバンク・
デスパイネの振り切ったバットが楽天の
嶋基宏捕手の首に直撃し、負傷交代となったシーンも記憶に新しい。
メディアも観客も、乱闘やアクシデントに関して、「珍プレー」の如く面白おかしく騒ぎ立てることが多く、時に違和感が生じる。暴力を正当化するつもりはないが、身の危険を感じた選手の怒りに必ず理由があることも忘れてはいけない。
文=富田 庸 写真=高原由佳